【連載】EXILEになれなくて #24|小林直己
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【連載】EXILEになれなくて #24|小林直己

第四幕 小林直己

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五場 夢が叶う場所 ~ “Naoki’s Dream Village”

 2020年11月、小林直己オフィシャルYouTubeチャンネルを開設した。その名も「Naoki’s Dream Village」。この名前には、僕の願いが込められている。さまざまな夢を叶える「場所」。多くの人が集まる、美しく、どこか懐かしい、いつか夢で見たような景観。それが「Naoki’s Dream Village」である。

 ステイホーム期間を経て、僕たちのアーティスト活動はオンライン上で新たな展開を迎えた。

 実稼働を伴う興行が行えない中、エンタテインメントを届ける新たな方法としてLDHが生み出したのが、「LIVE×ONLINE(ライブオンライン)」だ。独自の演出方法とカメラアングルにこだわったオンラインライブである。ただの無観客ライブではない。エンタテインメントの新たなブランドとして構築するために、これまで積み重ねてきたノウハウを投入し、オンライン空間だからこそ映えるエンタテインメントを追求し、ドローンカメラやVR
などの新技術も投入してきた。これまで、三代目 J SOUL BROTHERS、EXILE、そしてEXILE TRIBEで複数回このライブを行い、今、LDHのエンタテインメントの新たな軸の1つとなっていると言えるだろう。

 なぜ僕はYouTubeチャンネルを開設したのか。そういったオンラインでの新たなアーティスト活動の広がりや、Instagramで主演した映画を配信するなどの活動を経て、オンラインの可能性を強く感じていた僕は、自身のビジョンにある日本国内外の活動へのアプローチとして、YouTubeにも表現の場所を求めることにしたからだ。

 Naoki’s Dream Villageのルールは一つ。「世界中の人が楽しめるもの」だ。そこで、英語を使い、何気ない毎日を見せていくことから始まった。時にステイホームでの日常を映し出したり、時に作品を作ったり。自分にとっては実験的な場所であり、同時にステイホーム期間を経て価値観が一変した新たな僕を、知ってもらうための有効な場所になった。

 人は、必ず変わり続けている。僕自身、かつては普遍的なものが好きだった。だが、いくら普遍が好きだったとしても、さまざまな変化が止まるわけではない。花は咲き、枯れていく。髪の毛は伸び、汗をかく。生きている限りは僕らの肉体は変化を続けている。食べて、眠り、変化する環境に囲まれている僕たちは、精神や内面がそのままでいられるわけではない。1年前の自分と今の自分は違う。1日前にも、実は1秒前にも、必ず変化は訪れている。ステイホーム期間を経て、僕は変化を恐れずに楽しんでいく自分でいたいと思うようになった。

 もしかすると、そこがステイホーム期間で得た一番大きな変化かもしれない。変わっていくことを受け入れ、時に新たな分野に飛び込み、それが正解か不正解かを求めるのではなく、楽しんでいられるか。僕の中で物事の基準が大きく変わったし、それによって肩に力が入っていた頃よりも、随分と楽に生きられるようになった。

 同時に、周囲からのイメージが固定化され過ぎていて、今の自分とかけ離れている印象もあった。そういった仕事のオファーや、周囲からのフィードバックが続いたからだ。これは、自分としても変えて行きたいと思った。時に、ルックスを変えたり、ファッションを楽しんだりする。やったことのないことにチャレンジしたり、新たな人にも出逢う。そうした今の自分を活動にも反映することで、より可能性が広がっていくのではないか。

 こうした思いから、ダイレクトにタイムラグなく表現できる実験的な場所として、YouTubeチャンネル「Naoki’s Dream Village」を始めたのだ。

 YouTubeでの活動の中で、あることに気がついた。自分が原点に立ち返っているという感覚。それに気づいたのはつい先日のことだった。

「月刊EXILE」というLDH Publishing(LDHグループの1社・EXILEは雑誌を発行している)が発行する雑誌の対談で、EXILEのオリジナルメンバーであるEXILE MAKIDAIから、こんな言葉をもらったのだ。

「直己のことで印象に残っているのは、加入当時、リハーサルでの無邪気な直己の姿だ」

——そうだ、僕は無邪気だったっけ。

 年上ばかりのEXILEに入った僕は、とにかく多くの“兄たち”に甘えていた。経験も少なく好奇心だけが旺盛なあの頃の自分が発した空気を読まない言葉や、感情に任せた愚痴ですら、“兄たち”には聞いてもらえた。その環境に良い意味で甘え、頼っていた。もしかしたら、年上に甘えることは、EXILE時代に始まったものじゃないかもしれない。遡れば、ダンサー時代も学生時代も年上と一緒にいることが多かった。興味の赴くまま情熱を向け、自らをさらけ出し、人と出会っていった。それが本来の自分の一部だった。対談中のEXILE MAKIDAIの言葉で、それを思い出すことができた。

 ありのままの自分を認めることは難しい。今こうしてかつての自分を懐かしむことができるのも、歩んできた時間で自分を必要に合わせて変えてきたからだろう。その変化にも意味があったのだ。必要な変化を繰り返し、その上でたどり着いた今がある。

 一見安定しているような気がする今。しかし僕は本来の自分自身の無邪気さを忘れていた。自分の声が聞こえなくなっていた。それを、また、取り戻し始めている——。

 そんなことを思った時に、脳裏に浮かんできたのは、あるスピーチだった。2018年9月24日、ユニセフのグローバル・サポーターであるBTS(防弾少年団)が、ニューヨークの国連本部で世界中の若者たちに向けて「自分自身を語ろう」とメッセージを送った。そのスピーチの3分44秒からのところを紹介したい。

“Maybe, I made a mistake yesterday, but yesterday’s me is still me. Today, I am who I am, with all my faults and my mistakes. Tomorrow, I might be a tiny bit wiser, and that’s me, too. These faults and mistakes are what I am, making up the brightest stars in the constellation of my life. I have come to love myself for who I am, for who I was and who I hope to become. ”
(「昨日、僕はミスをしたかもしれません。でも、過去の僕も僕には変わりありません。今の僕は、過去のすべての失敗やミスと共にあります。明日の僕が少しだけ賢くなったとしても、それも僕自身なのです。失敗やミスは僕自身であり、人生という星座を形作る最も輝く星たちなのです。
僕は 今の自分も 過去の自分も 将来なりたい自分も すべて愛せるようになりました」)

 2017年11月、BTSはユニセフと共に「LOVE MYSELF(私自身をまず愛そう)」というキャンペーンを始めた。彼らには「本当の愛は自分自身を愛することから始まる」という信念があるという。

 そして、RMさんは語り続ける。

“Tell me your story. I want to hear your voice, and I want to hear your conviction. No matter who you are, where you’re from, your skin colour, your gender identity: speak yourself. Find your name, find your voice by speaking yourself.”
(「あなたのストーリーを聞かせてください。あなたの声を聞きたい。あなたの信念を聞きたい。あなたが誰なのか、どこから来たのか、肌の色や ジェンダー意識は関係ありません。
ただ、あなたのことを話してください。話すことで、自分の名前と声を見つけてください」)

 自分を愛すること。心の声をちゃんと聞くこと。胸の内を人に話すこと。それは、大人になればなるほど簡単ではなくなっていくように思う。RMさんのスピーチはそんな僕の思考の隙間にスッと入ってきた。当時、このキャンペーンのことや、BTSのことは詳しくは知らなかった。しかし、この考え方は、ここ数年自分が抱いていた気持ちと同じだった。「何かを語ることも、何かの意思を固めることも、自分を愛し、認めることから始まるんだ」と。
自分を愛し、認めること。それは自分の一人の力では辛く困難なものかもしれない。実際に僕も、日々に忙殺され、自分を信じるための勇気や体力はもう余っていなかった。周りに吹き荒れる突風に対応するだけで精一杯で、自らを見つめる時間や余力も残っていなかった。その方法もわからなくなっていた。

 しかし、新型ウイルスの影響で様々なものの動きが止まり、強制的に作られた時間と環境の下、自分と向き合う時間を作ることができた。自らと向き合うことはとても辛いことだったけれど、そのおかげで自分を愛する方法が少しだけわかったし、今までに感じたことのない前向きな気持ちや自分でい続けることの楽(らく)さのようなものを感じていることができた。

 すると、他人に対する見方や仕事に対する考え方も大きく変わった。人はひとりで生きていくことはできないこと。自分の仕事や夢や生活は周りの人とかたち作っていること。ギブアンドテイクの上に全てが成り立っているということ。その上で、自分の意思と選択が人生を動かしていく。すると、本当の意味で周りの人を大切にすることができるのではないか。それこそがまさにBTSが提唱する「LOVE MYSELF」と繋がっていると感じている(偶然にも、このステイホーム期間に一番と言ってもいいくらい聴いた曲は、BTSの「Dynamite」である)。いつか、このスピーチをしたRMさんと会って話してみたい。

 僕の名前は、小林直己。EXILEと三代目 J SOUL BROTHERSのメンバーです。

 多くの失敗と後悔をしてきましたが、ようやく自分と向き合え、また、自分を愛せるようになってきています。

 そして、今、毎日を楽しんで生きています。

 あなたの名前は何ですか?

 僕には、まだまだ夢がたくさんある。

 もっとインターナショナル作品に出演したい。ミュージカルでブロードウェーに立ちたい。憧れの俳優と共演したい——。人生で叶えたいこともたくさんある。ダイビングの免許を取りたい。富士山に登りたい。イタリアに行きたい。カナダに住みたい。家族を作りたい。格好いいおじいちゃんになりたい——。そういうことを言えるようになった自分を好きになったし、1人で歩むのではなく、誰かの夢と共に自分の夢を叶えていきたいと願っている。
そう、僕は今、活動を通じて誰かと幸せを共有したい。誰かの活力になったり、少しでもこの社会が明るくなっていけば良いと思っている。大それた願いかもしれないけど、いつか自分がこの世界からいなくなった後に生きる誰かが、少しでも住みやすい環境になっていることを願っている。そのために僕は、これまでにしたことのない新たなものへの挑戦が大切だと考えている。

 誰かが幸せになると僕も幸せになる。そのために僕が挑戦できる場所。1つ1つのことに取り組み、実現していける場所が「Naoki’s Dream Village」だと考えている。もはや、単なるYouTubeチャンネルにおさまらない。僕のライフワークを表しているコンテンツであると感じている。

「Naoki’s Dream Village」のチャンネルの中で、最近始めた「ダンスカバー」シリーズ。新たに公開される「This Is Me」は、まさにそんな自分の心情とリンクした作品となった。僕は僕以外にはなることはできない、だからこそ、自分を信じ、歩んでいきたいと声をあげる。

” I am brave, I am bruised
I am who I’m meant to be,
This is me.“
(「私には勇気がある、傷だらけだけど、
私は自分の運命を受け入れているの 
これが私よ」)

 僕が作った振り付けとともに、和訳がついたオリジナルのダンスカバー動画だ。ぜひ、観てほしい。

 これが、今の僕だ。

***

RM(BTS)の国連でのスピーチ 
抜粋元 :
・https://www.unicef.or.jp/news/2018/0160.html
・https://www.unicef.org/press-releases/we-have-learned-love-ourselves-so-now-i-urge-you-speak-yourself

★#25に続く

■小林直己
千葉県出身。幼少の頃より音楽に触れ、17歳からダンスをはじめる。
現在では、EXILE、三代目 J SOUL BROTHERSの2つのグループを兼任しながら、表現の幅を広げ、Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』に出演するなど、役者としても活動している。

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