文藝春秋digital
井上ひさし マルクス兄弟を見せられた 井上ユリ 100周年記念企画「100年の100人」
見出し画像

井上ひさし マルクス兄弟を見せられた 井上ユリ 100周年記念企画「100年の100人」

文藝春秋digital
「吉里吉里人」や「ひょっこりひょうたん島」などで老若男女から愛された小説家、劇作家の井上ひさし(1934~2010)。「まぎれもない天才」を妻・井上ユリ氏が綴る。/文・井上ユリ(料理研究家)

井上ユリ

井上氏

結婚当初、ひさしさんは映画のビデオを次々にわたしに見せた。ビリー・ワイルダー、黒澤明、ヴィットリオ・デ・シーカ等々。自分の好きなものを知ってもらおうとしていたのと同時にこちらの反応を見ていたようだ。マルクス兄弟でわたしが笑い転げるのを見て、心底安心したように「これを面白がってくれてよかった」と言った。

一方で、わたしがイタリア料理を教えていたものだから、俄然イタリアに興味を持ち、書くものの中で料理にふれるなど、なにかとわたしの受け売りをするようになっていた。

その様子を見ていた姉(米原万里)は、「ひさしさん、て『可愛いひと』だったのね」と言った。チェーホフの短編小説、「可愛いひと」の主人公オーレンカは、男運が悪いため何度か結婚するが、いつもそのときの夫と一体化してしまうひとなのだ。

あのときのひさしさんは、離婚を経験して、もう失敗したくないから一所懸命わたしに合わせていたのだろうし、それまで知らなかった世界にふれて面白がってもいたのだろう。

井上ひさし

井上ひさし

この続きをみるには

この続き: 298文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に幅広いテーマの記事を配信しています。政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、一流作家の連載小説、心揺さぶるノンフィクション……月額900円でビジネスにも役立つ幅広い「教養」が身につきます。

一流の作家や知識人、ジャーナリストによる記事・論考・ルポルタージュなどを毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

文藝春秋digital
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。