見出し画像

土門拳「土門拳の風貌」有名人たちの恐るべき肖像写真集 評者・原田マハ

文藝春秋digital

有名人たちの恐るべき肖像写真集

写真を撮られるのが苦手である。

撮影されるときは、ごまかそうとしてやたら笑顔を作ってしまう。いつもそんなふうだから、私のポートレイトはプロが撮ったものでも友人が撮ったものでも同じようにニカッと笑った顔である。時々、カメラマンに「撮られ慣れていますね」と言われることもあるのだが、「不自然な」笑顔を「自然に」作ることが、撮り手にとっては「慣れている」ように感じられるのかもしれない。そんな時に出来上がってきた写真を見ると「いかにも」な感じ。プロのカメラは欺けないなと悟る瞬間だ。

俳優や芸能人なら話は別だろうが、作家や画家や学者など、滅多に写真を撮られない人たちにとって、ポートレイトを撮られることが「楽しくてたまらない」ことだとは思えない。どんな顔をすればいいのか、立つべきか座るべきか、目線はどこに向けたらいいのかと、そわそわと落ち着かないに違いない。それがその世界で一流の人であればあるほど、ポートレイト撮影などはっきり言ってどうでもよく、苦痛に満ちた撮影時間が早く終わってさっさと仕事にかかりたいと思う人もいるだろう。もういい加減に解放してくれと、怒り出す人もいるかもしれない。

土門拳は、まさにその瞬間を狙ってカメラを据えた。据えたのはカメラばかりではない。腰も肝もとことん据えていた。そうして出来上がったのが本書である。

この続きをみるには

この続き: 826文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に幅広いテーマの記事を配信しています。政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、一流作家の連載小説、心揺さぶるノンフィクション……月額900円でビジネスにも役立つ幅広い「教養」が身につきます。

文藝春秋digital

¥900 / 月

一流の作家や知識人、ジャーナリストによる記事・論考・ルポルタージュなどを毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

文藝春秋digital
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。