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霞が関コンフィデンシャル<官界インサイドレポート>

日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。

★「チーム菅」の正念場

コロナ禍と支持率低下にあえぐ菅義偉政権。だが発足から9カ月近くが経ち、官邸の事務体制が財務省と外務省主導でようやく固まってきた。

今年1月に政務秘書官として招聘した寺岡光博秘書官(平成3年、旧大蔵省入省)が、まがりなりにも内政の司令塔としての役割を担いつつある。

寺岡氏は本省の太田充事務次官(昭和58年)とも連携し、コロナ対策などを取り仕切る。また寺岡氏は脱炭素政策のキーマンで、安倍晋三前首相の秘書官を務めた財務省の新川浩嗣総括審議官(62年)とも良好な関係を築いている。その寺岡氏の下で大沢元一秘書官(平成7年)が実務を担う。

外交では高羽陽秘書官(同、外務省)が本来の役割に注力できるようになってきた。本省から秋葉剛男事務次官(昭和57年)が高羽氏を強力にバックアップしている。

財務省、外務省いずれも、次官―秘書官ラインで内閣を支える役回りを果たしている。

もうひとり、外務省出身の小野日子(ひかりこ)内閣広報官(63年)も記者会見だけでなく首相官邸での「ぶら下がり」取材の進行役を務めるようにまでなってきた。スタンドプレーに走りがちだった前任の山田真貴子氏(59年、旧郵政省)との差が際立つ。

全体としてはまだ「チーム菅」といえるまでの一体感はない。歴代内閣と比べると、政権発足当初のマイナス評価からようやく水面に顔を出そうとしている程度だ。

★花形ポストの復権

経産省の貿易交渉や通商政策を担う経産審議官は、時には事務次官以上に注目されるポストだ。しかし、内閣官房に経産、外務、農水省などの「連合艦隊」が置かれ、環太平洋連携協定(TPP)交渉などを担うようになって、やや影が薄くなっている。

田中繁広経産審議官(60年、旧通産省)は今夏で交代するとみられ、復権への期待を担う後任は、広瀬直(なおし)通商政策局長(61年)の昇格が順当とみられている。田中氏と同じように国際部門のエースとして育てられ、TPP交渉も最前線で担った。

落ち着いた物腰の広瀬氏は「若手のアイデアや行動力を引き出す術に長けている」(局長経験者)という。

5月には、経済安全保障への対応を企業に求める資料を産業構造審議会の分科会に提出。貿易制裁につながる可能性があるウイグルなどの人権問題も取り上げた。課長・課長補佐クラスが中心になってまとめたレポートは、「経産省らしいアイデアや切り口にあふれた内容」(大手商社幹部)と評判になった。

通商政策局長には平井裕秀商務情報政策局長(62年)が有力視される。米国と激しくやり合っていた90年代に米州課の課長補佐だった。多少の無理は承知で押し通す豪腕型で、保坂伸資源エネルギー庁長官と並ぶ62年組のエースと言われる。

経産省の国際部門には、経済安保を視野に中国通の人材が配置されている。通商政策局の田村暁彦審議官(平成元年)は香港に留学経験があり、貿易経済協力局の岩永正嗣審議官(3年)は北京の日本大使館に駐在したことがある。

若手では、安全保障貿易管理政策課長の香山弘文氏(7年)が存在感を発揮している。藤井敏彦内閣審議官(昭和62年)と連携し、経産省が冷戦期から培ってきた貿易管理のノウハウを、他省庁が所管する医薬品、情報通信、物流にも広げようと動いている。井上博雄官房総務課長(平成6年)の後任候補とささやかれている。

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経済産業省

★技官初の総審誕生

総務省ではこの夏の人事で「谷脇次官・内藤総審(総務審議官の略称)」の体制が誕生するはずだった。しかし接待問題で谷脇康彦総審(昭和59年、旧郵政省)は失脚。内藤尚志自治財政局長(同、旧自治省)が次官に就任することになりそうだ。

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