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霞が関コンフィデンシャル〈官界インサイドレポート〉

日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。

★総裁選の渦中で……

自民党総裁選の最中、霞が関は次期首相の政務および事務担当首相秘書官の人事話で持ちきりだった。

まず岸田文雄氏が4年8カ月にわたって大臣を務めていた外務省。省内で熱い視線を浴びていたのが、中込正志国家安全保障局内閣審議官(平成元年入省)。外相時代に岸田氏の秘書官を務め、岸田氏が中込氏を高く評価していたことは省内で周知の事実だ。

だが岸田氏は、事務所の番頭格である山本高義政策秘書を秘書官に据える意向を周囲に語っており、また山本氏は安倍晋三首相秘書官兼補佐官だった今井尚哉氏から直々に「政務秘書官指南」まで受けていた。こうした経緯から、中込氏は非バッチの首相補佐官として官邸入りするとの予想がもっぱらだ。

一方、外務省の人事当局が頭を悩ませていたのが、「河野太郎首相」誕生時の首相事務秘書官人事。外務大臣だった河野氏の秘書官を務めた七澤淳駐中国公使(同)が最適任であることは自明であるが、同氏は1年前に北京に着任したばかり。だが、対人関係に難のある河野氏が気に入っていた七澤氏を充てるしかないと覚悟したという。

経済産業省の人事当局者が最も恐れていたのも河野首相の誕生だ。「脱原発」を旗幟鮮明にしていた河野氏は、経産省が推進した「エネルギー基本計画」をめぐって、小泉進次郎環境相とタッグを組み、悉く経産省案を潰しにかかっていたからだ。

さらに同省幹部が怒り心頭に発したのが、河野氏にエネルギー政策について助言している役人の存在だ。同省から内閣府規制改革推進室に出向している山田正人内閣参事官(03年、旧通産省)。河野氏が山田氏を秘書官に抜擢し、脱原発に邁進する事態だけは何としてでも避けたい。それが経産省の本音だ。

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岸田首相

★粒ぞろいの「平成入庁組」

警察庁は9月、総選挙まで2カ月ほど猶予があるとみて大規模人事を断行。長官に中村格次長(昭和61年入庁)、ナンバー2にあたる次長に露木康浩官房長(同)、警視庁トップの警視総監に大石吉彦警備局長(同)がそれぞれ順当に昇格。精鋭揃いの「花の61年組」の出世レースを勝ち抜いた3人が要職を固めた。

ナンバー3にあたる官房長の後任には、北海道警本部長だった小島裕史氏(63年)が抜擢された。小島氏は、好き嫌いを露骨に人事に反映する栗生俊一元長官(56年)に気に入られ、人事課長や警視庁警備部長を経験。だが61年組に比べれば存在感は薄く、部下への高圧的な態度が不評を買っている。にもかかわらず今回抜擢されたのは、有力視されていた藤本隆史刑事局長(62年)が失速したためだ。藤本氏は小島氏より1期上で総括審議官、大阪府警本部長、刑事局長と重要ポストを歴任。本人は官房長就任に意欲を示していたが、「細かい指示を出す割に失敗を恐れて決断しない」と大ブーイングの嵐だった。

大石氏の後任の警備局長には櫻澤健一総括審議官(63年)が起用された。一時は松本光弘前長官(58年)と気脈を通じる新美恭生警察大学校長(62年)も候補に挙がったが、快活で行動力のある櫻澤氏が選ばれた。

平成入庁組は、交通局長に就いた楠芳伸千葉県警本部長(元年)が長官候補としてエリート街道をひた走り、総括審議官に就いた近藤知尚外事情報部長(同)が追いかける。組織犯罪対策部長に昇任した渡辺国佳警視庁刑事部長(02年)は刑事部門のエース。将来、同期の原和也埼玉県警本部長と長官の椅子を争うことになりそうだ。

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★官邸から「待った」が

新型コロナウイルス対策を取り仕切る霞が関の新体制がようやく固まった。厚生労働省新次官には内閣官房の吉田学新型コロナ対策室長(昭和59年、旧厚生省)の起用が内定。吉田氏の後任に厚労省医政局長だった迫井正深氏(平成4年)が送り込まれた。

時季外れの異動となった理由は表向き、「第5波」で長期化した緊急事態宣言での対策を優先させたもの。しかし実際は、樽見英樹氏(昭和58年)から「典型的役人」(医療関係者)の吉田氏への次官交代に対し、官邸から「待った」が掛かっていた。

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