__渋野日向子

渋野日向子が切り拓く日本女子プロゴルフの近未来

文・内藤雄士(ツアープロコーチ・ゴルフ解説者)

 2019年のAIG全英女子オープンで20歳の渋野日向子さんが初出場で優勝しました。まさか勝つところまで行くとは思っていませんでしたから、衝撃的でしたね。

 海外のメジャーで勝つことがどれほど凄いのか。青木功さん、尾崎将司さん、中嶋常幸さん、丸山茂樹さんや松山英樹君も、本当に惜しいところまで行ったんですが、男子のレギュラーはいまだかつてゼロです。岡本綾子さんや世界ランキング1位の宮里藍さんですら届かなかった。メジャーでの勝利は、1977年の樋口久子さんと、2013年の全米シニアプロ選手権の井戸木鴻樹さんだけです。

 渋野さんが勝った要因はいくつもありますが、まずは身体的な能力の高さと体力です。ゴルフは技術的なことだけだと思う方が多いかもしれませんが、集中を切らさず飛距離も落とさずに4日間をプレイすると、脳が極度に疲労するんです。栄養不足で脳にガス欠させないためには、もともとの体力が必要で、それがないとすべてがうまくいかなくなってしまう。

 よく終盤に崩れてしまう若手がいて、メンタルが弱いということを言われるんですが、大本は体力なんです。また、他の若手が海外のメジャーにいくと萎縮してしまうのは、海外の選手を見ると明らかなフィジカルの違いに圧倒されてしまうからでしょう。練習場なんかで、向こうの選手のバツーンと打つ球の速さとか、ターフ(芝)の取れ方なんかを見て、自分のがヒョロヒョロ球に思えてくる。

 だけど、渋野さんはフィジカルも凄いし、球も凄いから、そこで萎縮することはまったくないわけです。それは畑岡奈紗さんも同じです。渋野さんはソフトボール、畑岡さんは陸上競技で、かなり上まで行ったことが、最大のストロング・ポイントだろうと思います。

 渋野さんは、もともとのスイングやパッティングの良さという下支えがあって、その上で優勝争いのストレスやプレッシャーを跳ね返すだけの体力と精神力の強さがあったのでしょう。それとあの笑顔が、男女を問わず子供から大人までその心を掴んで、ギャラリーと一体化してしまった。完全なアウェーなのに、ホームみたいになっちゃった。それはやろうとして出来るものではない、生まれつきのキャラクターの素晴らしさですね。

 最終ホールでバーディパットを決めたとき、同じ組のブハイ選手がバンザイしてましたよね。ライバルをも味方につけてしまった。その意味では、同伴競技者に恵まれたことも大きい。ゴルフは同伴競技者の影響が大きいんです。日本人のことが嫌いな選手と一緒だったら、また違っていたかもしれません。

 いろんな要因が良い方向に重なって、渋野さんは勝ったのです。

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