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梯久美子 歴史の闇に響く〈声〉 続100年後まで読み継ぎたい100冊

『昭和万葉集』講談社
『世紀の遺書』講談社
『きけ わだつみのこえ』岩波文庫
『戦没農民兵士の手紙』岩波新書
『墓標なき八万の死者―満蒙開拓団の壊滅』角田房子 中公文庫
『この果てに君ある如く―全国未亡人の短歌・手記』中公文庫
『広島第二県女二年西組―原爆で死んだ級友たち』関千枝子 ちくま文庫

 一握りの人間の決断によって多くの人の運命が左右されることを、プーチンが始めた戦争は全世界に見せつけた。年表に大文字で記される出来事の只中に私たちはいる。だが本来、歴史とは個人の人生の集積である。戦争の時代を生きた人々の声と人生を集めた書物を選んでみた。

『昭和万葉集』は、専門歌人だけでなく、広く一般から募った短歌8万2000首あまりを収録した書。〈ぐるぐるねぢて掌(て)を切つていく叩くやうに戦友の掌を切つていく〉(宮崎信義)は前線の兵士の歌、〈さがし物ありと誘(いざな)ひ夜の蔵に明日征く夫は吾を抱きしむ〉(成島やす子)は銃後の女性の歌である。その時代ゆえにそのように生きるしかなかった人間の声が全編にこだましている。

『世紀の遺書』は戦犯として処刑された人たちの遺稿・遺書を集めている。A級はともかく、戦勝国7か国のそれぞれ違った軍法で裁かれたBC級戦犯についての資料は少なく、本書は貴重な歴史の証言でもある。

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