菅政権「支持率急落」の裏で——二階、麻生、安倍の策謀
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菅政権「支持率急落」の裏で——二階、麻生、安倍の策謀

「桜」だけでなく「菊」までもが政争の具に?/文・赤坂太郎

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▶︎安倍政権の経済ブレーンたちが執拗に菅の懐刀デービッド・アトキンソン批判を展開している
▶︎麻生と安倍が早期の解散総選挙の必要性で足並みをそろえ、菅の解散先送り戦略を苦々しく思っている
▶︎コロナに加え、「皇女」制度創設をはじめとする国の長期的課題が菅に押し寄せている

「桜」だけでなく「菊」までもが政争の具となるのか?

昨年12月4日夜、東京・赤坂の日本料理屋。副総理兼財務相の麻生太郎と自民党幹事長の二階俊博が緊張した面持ちで向き合った。

「安倍さんの話は、あまり騒がない方がいいですよ」

意気軒昂ぶりが伝えられる前首相の安倍晋三の動きを念頭に釘を刺した二階に対し、麻生は即座に「桜」のことにすり替えて、こうはぐらかした。

「これは安倍事務所の問題ですからね」

虚を突かれた二階が「安倍さんはもう辞めた人じゃないですか」と詰め寄ったが、麻生は「体力も気力も十分ですよ」とニンマリしてみせた。同席した麻生側近の国会対策委員長代理の松本純と二階側近の幹事長代理の林幹雄は黙って聞いていた。

この日午後、安倍は国会内で報道陣に「桜を見る会」の前夜祭をめぐる東京地検特捜部の聴取要請について「何も聞いていないが、誠意をもって対応していく」と話していた。特捜部は12月21日に安倍を聴取。公設第一秘書らを政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する構えだ。

こうした動きに麻生は「なぜ、今このタイミングなのか」という不信感をつのらせていた。東京地検特捜部による安倍周辺への捜査は、行政機関トップの了解なしではあり得ない。言い換えれば、現首相の菅義偉が「了」としない限り、安倍聴取はあり得ないという疑念だ。第二次安倍政権誕生の立役者であり、官房長官として7年以上も安倍政権を支えてきた菅がなぜ、かつての主君を葬り去ろうとするのか。

約2カ月前にさかのぼる。

11月10日。東京・西新宿の日本料理屋にて、安倍は久しぶりに麻生と夕食をともにした。麻生は同席した松本と安倍側近の文部科学相・萩生田光一に、持論の経済政策について熱弁を振るった。

コロナ感染拡大以降、体調不良が続いていた安倍が、総理を辞めた途端、また元気な姿を取り戻したことで、麻生は「ところでいつ(派閥に)戻るんですか?」と笑いながら水を向けたという。安倍は手を振って受け流したというが、麻生は安倍の派閥への復帰とともに、2021年秋とみられる自民党総裁選を経ての安倍の「再々登板」にも期待をかけている。安倍の出身派閥の細田派に麻生派を加えれば、自民党所属国会議員の約4割を確保できる――そんな野望を抱く麻生は、足場固めに余念がない。

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(左から)二階氏、麻生氏、安倍氏

「解散先送り」の怨念

一方、派閥への早期復帰を否定する安倍だが、麻生の期待に呼応するように、党内での活動を徐々に活発化させている。

翌11日、安倍は自民党の「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」の会長に就任し、設立総会を開いた。議連の前身は「アベノミクスを成功させる会」(会長・元地方創生担当相山本幸三)で、安倍を支持する面々がこぞって参加した。会長代行のポストに就いたのは元外相の岸田文雄。安倍に再び接近することで、総裁選に向けて反転攻勢の足掛かりにしたいという岸田の狙いが透ける。

設立総会では日銀前副総裁の岩田規久男が講演したが、参加者の話題をさらったのは、菅の懐刀とも言われる元金融アナリスト、デービッド・アトキンソンへの言及だ。政府の有識者会議「成長戦略会議」のメンバーでもあるアトキンソンは、中小企業の再編促進策の旗振り役の一人。ところが岩田は、アトキンソンが唱える中小企業の労働生産性に関する持論について「今のデフレの状況を計算に入れていない」と厳しく批判した。ときを同じくして、安倍政権で内閣官房参与を務めた前スイス大使の本田悦朗も自民党若手の「日本の未来を考える勉強会」でアトキンソンについて「マクロ経済を理解していない」と痛烈に批判している。安倍政権の経済ブレーンによる執拗なアトキンソン批判は何を意味するのか。

安倍自身も積極的なメッセージを発信し始める。議連の設立総会の日の夜、当選同期の議員と都内のすし屋で会食した安倍は、幹事長代行の野田聖子や岸田らを前に「私だったら来年1月に解散するけどね」と唐突に口にした。直後の11月16日には、二階派所属の長島昭久のパーティで「もし自分が総理だったら(衆院解散について)非常に強い誘惑に駆られる」と、早期解散の可能性にあえて触れた。

菅政権発足後、自民党内には早期解散を求める声が広がっていた。政権支持率が高いうちの解散は、与党に有利とみられた。だが菅は、2021年春以降に解散を先送りする考えだ。自民党総裁の任期満了である21年9月直前に衆院を解散し、勝利すれば、総裁選での無投票再選の道も開ける。菅の戦略は解散をできるだけ総裁選に近づけることにある。

そんな菅の解散先送り戦略を人一倍、苦々しく思っているのは麻生だ。2008年に発足した麻生政権において、麻生は早期解散で突破口を開こうと考えていた。ところが当時、選対副委員長だった菅は、最後まで解散先送りを麻生に進言。結果的に菅の抵抗で麻生は「追い込まれ解散」を余儀なくされ、民主党政権の誕生を許した。麻生はその時の屈辱を今も忘れない。

その麻生と安倍が今、早期の解散総選挙の必要性で足並みをそろえる。

12月2日夜。安倍の出身派閥の細田派と麻生が率いる麻生派の衆院当選三回生を中心とした若手議員約30人が都内のホテルで会食した。表向きは安倍の慰労が名目の会合とされていたが、実質は異なった。安倍は次期衆院選をにらみ、若手議員らに後援会を強化するようひたすら訴えた。麻生も逆風下の選挙戦での準備を怠らないよう、出席者に促した。

20200401BN00018  菅義偉

菅首相

石破を持ち上げ安倍をけん制

安倍や麻生の「挑発」ともとれるこうした動きを、菅も黙って見過ごしてきたわけではない。

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