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2022年3月号|三人の卓子 「文藝春秋」読者の感想文
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2022年3月号|三人の卓子 「文藝春秋」読者の感想文

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「新しい資本主義」に問う

2月号に掲載された岸田首相の緊急寄稿『新しい資本主義』を拝読いたしました。

新しい資本主義を目指すのであれば、市場の失敗を検証すると共にこの30年間日本が成長できずにいた原因をハッキリと検証し改善するという事が不可欠です。

ですが、このことが出来ているようには見えません。むしろ失敗には目を向けず自分たちに都合の良い事を上塗りしてきたのではないでしょうか。

成長→利益→投資→成長→……のサイクル無くして、日本の自立も安全保障も成り立たないのではないでしょうか。

政治家、役人には民間が行っているPDCA位は実行し内容を公にして欲しいと思います。

戦後の日本の成長は各企業の努力は勿論ですが、人口ボーナスが大きな貢献をしたのも事実ではないでしょうか。

人口ボーナスが無くなり国内需要が減る一方、国内で成長するための規制改革が十分に為されていない。海外ビジネスに積極的に参加しようとする企業にとって、規制の壁が高いままになっている。このような現状を見直し、経済成長に必要な改革が欧米並みに行われれば日本にも成長の余地がまだあるのではないか。

既得権保有企業に忖度するような経済運営では、新しい資本主義とは言えないと思います。

是非PDCAを回し、現状と展望をしっかりお話し頂ける事を期待しています。(小見徹哉)

「老人支配国家」の課題

エマニュエル・トッド氏が2月号「『老人支配国家』に明日はない」で指摘した老人支配の弊害は、数年前に話題となった「シルバー・デモクラシー」を思い出させる。

結局、体よく見て見ぬふりをされ、日本社会の変革に繋がることもなかったが、国家の存立を脅かす、避けて通ることのできない課題であることを再認識させられた。

政治家がこの難題から目を背けるのは、高齢者の利益に反する政策の選択が、自らの当選を危うくするとの自己保身にある。マスコミの腰が引けているのも同じ理屈だろう。

そもそも政治家は、負託者たる国民の近視眼的かつ利己的な感情に抗ってでも、国家の存続に必要な施策を粛々と遂行する責務がある。国民もまた、殊に人生経験豊富な高齢者であれば、自ら謳歌する自由が他者の不自由によって成り立っていることを弁え、「大洪水よ、我が亡き後に来たれ!」的な、無責任で卑怯な態度を慎むべきである。国民の意識が大局的・理知的でなければ、政治家の質の向上など望むべくもない。

とはいっても、個人の良識に期待できないなら、何らかの規範的な仕掛けがないと、結局はスルーされ負の遺産だけが残される。70歳を数えるトッド氏自らが「『普通選挙』を信奉する私でも、私のような高齢者からは投票権を剥奪すべきではないかと思う」と述べているが、選挙権の完全な剥奪が困難だとしても、高齢者の国政選挙権を参議院議員選挙だけに限定し、経験値の高さに裏付けられた「良識の府」の実現に貢献いただいては如何か。(河本哲治)

一言を噛み締めて

2月号、筒井康隆氏の『「美女」は消えますか?』を拝読致しました。

最近の様々な言葉や表現に対する規制を眺めていると、これは誰の為に行われているものなのか? と考えさせられます。

「私の権利を守るために主張している」人というよりかは、「この権利を本当に必要とする誰かの代わりに、私が主張してあげる」というような、そういうものが多いように感じるのです。

「誰かのため」とは言うものの、ハッキリと「誰」なのか分からない。結局誰が自由になっているのか。片方が「自由」になれば、もう片方は自ずと「不自由」になる、これは勿論の事。

では、この「自由」を主張して、誰が「自由」になったのか。

それすらも明確に分からないまま、世の中が大きな主張に影響されて突き進んでしまっている気がするのです。

一体、誰の為に世の中が進んでいるのでしょうか。これは表現に限らず、政治においても、社会や生活全般においても私が感じる事です。

ネットで見えない誰かと繋がれるからこそ、見えない誰かの事を考えすぎてこのような現象が起きてしまうのでしょう。

自由に物事が言える時代だからこそ、自分の発する一言一言は誰の為なのか、何の為なのか考え、噛み締めて発していきたいものです。(加藤優河)

ベストセラーの構図

斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』(集英社新書)がベストセラーとして話題を集めていた時期、「書店員として、読んでおいた方がいいだろうか」と手に取りました。

が、パラパラと中を読んでみて、どうにも胡散臭いものを感じ取り、結局購入はしませんでした。その後、2月特別号に載った「『人新世の「資本論」』に異議あり」(先崎彰容氏)を読み、私が感じた胡散臭さの正体が、ようやく分かった気がしました。

それは、斎藤氏が語る理想社会への嫌悪です。スポーツやハイキング、園芸・絵画・読書等、多彩な趣味に当てる時間をたっぷり持ち、ボランティアや政治活動に参加する余裕もある社会……。先崎氏が指摘される通り、「なんと美しく、しかし深みに欠けている」ことでしょうか。

本書がベストセラーになったのは、今、経済的にも精神的にも苦しんでいる人が多いからかもしれません。そんな人たちが、斎藤氏の説く理想社会に惹かれたのでしょう。

先崎氏の言う「バラバラに砂粒化した個人」を理想郷へと誘う斎藤氏の物言いに、多くの人が惹きつけられたことに私は寂しさを抱かずにいられません。

ベストセラーとは結局、人々の不安や怖れといった感情に付け込むことによって生まれるのだと、また証明されてしまったようなものですから。

……悲しいですね。(高柳俊彦)

菊池寛の慧眼に感服

本誌を定期購読して久しい。創刊100周年を記念し、新年号から始まった鹿島茂氏の連載『菊池寛 アンド・カンパニー』を興味深く読んだ。そのなかで、文藝春秋の創業者菊池寛が創刊当初から“予約購読”を呼びかけていたことを知り、その慧眼に感服した。

私が小学生の頃、父は毎月欠かさず『文藝春秋』を読んでいた。もしかすると予約購読していたのかも。父の書斎の本棚には、日本文学全集がぎっしり。私は飽かずに読み漁った。

当時の我が家は立派な門構えの一軒家で、私個人の子供部屋まであった。親バカの父は、「お前は東大に行くんだ」が口癖。だが、私が小学校を卒業する春に肺結核で亡くなってしまった。感染した母は療養所へ。取り残された私は11人家族の母の実家へ預けられ、菊池寛と同じく修学旅行にも行けなかった。戦後の生活困窮の時代である。

高等小学校に通い、授業料を2年分節約する屈辱を味わった。その後、学費の免除される師範学校を受験し入学。卒業した1949年、学制改革で師範学校は廃止された。

定期購読で届いた2月特別号と一緒に、本誌の創刊号が同封されていた。子供の頃、父の書斎で読んだ全集にあったような多くの作家の名前を目にし、改めて菊池寛の先見の明に敬意を表したい。当時の旧漢字や旧仮名文字を読むにつれ、私の幼き日の思い出が脳裏を駆け巡る。連載の続きが楽しみだ。(清野最也)

出版界の決意表明

これは本気だ、と思った。

2月号の巻頭随筆。岩波書店の坂本政謙社長が、「もうこのあたりが限界」と、経営者としての苦悩を吐露していた。

昨今の出版界は極めて厳しい状況だという。16年連続で書籍・雑誌の推定販売金額は前年を下回り、街の書店も99年から半減。片や、コロナ禍もあってか、電子出版は大幅増。この時代の変化に対応するための方法に「正解はない」。

「創業の精神」を拠り所に、「なにが求められているのかを考える」姿に高志を見た。

創業110年の名門出版社の舵取りとはいかなるものか、私のような若輩者は想像することにさえも背を向けたくなるが、逃げずに真っ直ぐ未来を見通す坂本社長の力強い決意表明に勇気も頂いた。

さらには、自社刊行物であっても臆するようなことを、わざわざ競合の月刊誌に寄稿して、である。これが本気でなくて、何が本気となるだろうか。時代を動かす本物の経営者とはこういうものなのかと、一社会人としても大いに感銘を受けた。その強い想いは、最近の『世界』の骨太な特集からも十二分に感じている。

「文庫」「講座」「新書」に加えて、どんな「〇〇」が我が国の新たな出版文化として誕生するのか。これからの楽しみが一つ増えた。『文藝春秋』と共に、この国を代表する出版社の挑戦を、一読者として心から応援し続けたい。(鈴木健)

★「三人の卓子」へのご投稿をお待ちします

創刊100周年を迎える月刊誌『文藝春秋』の名物コーナー「三人の卓子」。雑誌掲載記事に対する読者の方々のご意見、ご感想を掲載しています。その「三人の卓子」を今後、note上でも募集することにしました。

小誌記事についての賛否含めて、自由なご意見、ご感想をお寄せ下さい。記載いただいた個人情報は、本欄および小誌電子版への掲載と記念品送付のためのみに利用し、利用後は、すみやかに廃棄いたします。

規定 600字以内 住所・氏名・年齢・職業明記 次号の締切りは20日 掲載の方には記念品をお贈りします。
宛先 〒102-8008 千代田区紀尾井町3-23 文藝春秋編集部「三人の卓子」係

※電子メールでのご投稿の場合、添付ファイルはお避け下さい。
アドレス mbunshun@bunshun.co.jp

■本欄にかぎらず投稿原稿は返却できませんので、必ずコピーをとってからお送り下さい。また、原稿の一部を手直しすることがあります。(文藝春秋編集部)


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