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丸の内コンフィデンシャル 東芝「立ち往生」、セブン&アイの聖域…

★東芝の「立ち往生」

東芝(綱川智社長兼CEO=最高経営責任者)が崖っ縁に立たされている。

昨年11月、発電機などを手掛ける「インフラサービス」、半導体を中心とする「デバイス」、資産管理会社の「東芝」の3つに分割する計画を発表したものの、発行済株式の約3割を保有する一部のアクティビストが反対。今年2月には3分割を2分割に変更し、株主還元を増やすことで折り合いをつけようとしたが、アクティビストは反発を続けている。

2017年に東芝株を保有した「物言う株主」と呼ばれるアクティビストが東芝の方針に対して首を縦に振らないのは、東芝の株主還元よりも、得なエグジットがあるはずだと考えているからだ。「東芝株を1株6000円で買うファンドはいるはず。アクティビストはそうした連中に売った方が分割するよりリターンが大きいと考えている」と関係者は指摘する。

現在、株価が4000円台半ばの東芝株を1株6000円で買うファンドはいるのか。別の関係者は「複数のアクティブファンドが興味を持っている」と語る。アクティブファンドはアクティビストと呼称は似ているが、全く別の存在だ。

株式を長期間保有する投資スタンスを取り、企業を揺さぶったり、株主還元を要求したりしない。

こうしてみると東芝はアクティブファンドに株式を買い取ってもらった方が良いように見える。それでも分割にこだわるのは、アクティブファンドが買うことになった場合、確実に実施される資産査定を恐れているためという。

「東芝には火力発電事業などに隠れ損失があるとされる。それが明るみに出れば、1株6000円の価値などないことが分かってしまう」(別の関係者)

日本政府にとっても、八方塞がりの東芝を見捨てることもできない。今後2、30年かかるといわれる東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業の担い手は東芝しかいない。その東芝が空中分解すれば、窮地に立たされるのは監督官庁の経済産業省であり、ひいては岸田政権だからだ。落とし所は今なお不透明だ。

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★姿を消した本命

ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が英半導体子会社アームの米エヌビディア(ジェンスン・ファンCEO)への売却を断念した。20年9月に契約したものの、米国をはじめとする各国の独禁当局の強硬な反対にあったためだ。

エヌビディアとはアームの売却の対価として100億ドル超の現金とエヌビディア株式を最大1.4%譲渡される契約を結んでおり、取引総額は約400億ドル。SBGは1兆円規模の投資リターンを得られるはずだった。

2月8日に発表されたSBGの21年10~12月連結決算は、純利益が前年同期比で98%減となる大幅減益。苦境がつづく同社にとって、アーム売却断念は大きな痛手だ。

だが、孫氏にとっては、それよりもマルセロ・クラウレ副社長執行役員最高執行責任者(COO)の電撃退社の方がショックは大きかったと言われる。

南米ボリビア出身のクラウレ氏は、米国で起業した携帯電話販売会社を14年、SBGに売却し、グループの一員となった。同じ年に、SBGが経営再建を進めていたスプリント(現・TモバイルUS)の最高経営責任者(CEO)に就任し、業績を改善させた。

SBGの副社長兼COOに就いたクラウレ氏の最大の功績は、孫氏の長年の目標だったTモバイルとの統合を20年に実現したことだろう。

だが、孫氏は17年に始めた新興企業向け投資ファンド「ビジョン・ファンド」に完全に軸足を移し、SBGは携帯電話会社から投資会社に変貌していく。クラウレ氏の存在価値は低下する一方だった。

近年、孫氏は、後継者探しを「最重要テーマ」として掲げてきたが、首尾よく進んでいない。14年には米グーグル元幹部のニケシュ・アローラ氏の招聘が注目を浴びた。「後継者」と孫氏は公言し、15年3月期に165億円もの役員報酬を支払ったことが話題になったが、2年後の16年にアローラ氏は退任。

そして本命のクラウレ氏も孫氏の下を去り、後継者候補は、唯一の副社長で、「ビジョン・ファンド」を統括するラジーブ・ミスラ氏に絞られた。

孫正義

孫氏

★セブン&アイの聖域

セブン&アイ・ホールディングス(井阪隆一社長)が大きな選択を迫られている。

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