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丸の内コンフィデンシャル 民放トップ人事「社員からの冷たい視線」、サイバー「ポスト藤田」、日産「第2のマレリ」が出る?、任天堂「物言う」御曹司の登場

★社員からの冷たい視線

日本テレビが5月12日付で新たな役員人事を発表した。11年にわたりトップを務めた大久保好男会長が退き、後任に杉山美邦社長が就くことが決まった。今度の人事で、注目を集めたのが山口寿一読売新聞グループ本社社長の「日テレホールディングス取締役会議長」就任だ。代表権をもつにもかかわらず非常勤だという。またIIJ社長の勝栄二郎元財務次官が社外取締役、北村滋前国家安全保障局長が非常勤監査役に就任。「現首相秘書官の嶋田隆元経産次官も監査役だった。読売から天下り官僚を押しつけられ、メディアとしていかがなものか」と読売支配強化に反発する社員も少なくない。

視聴率で日テレに並びつつあるテレビ朝日。使い込みやパワハラで亀山慶二前社長が辞任し、早河洋会長が兼務していた社長職には篠塚浩常務が内定した。同氏は報道局長、担当役員を10年以上続け、夕方ニュースの過剰演出や財務次官による女性記者へのセクハラ問題などの対応に奔走した。時に厳しい批判も受けたが、早河会長に忠誠を尽くしトップの座に。社員らは「問題発生時にクビを差し出す役割だろ」と冷めた視線を送る。

TBSテレビは武田信二会長・佐々木卓社長の布陣に変わりないが、中谷弥生DXビジネス局長の取締役就任が耳目を集める。オヤジキラーの敏腕記者として活躍後、営業に転じた。ネットフリックスと組みドラマを制作する事業を牽引。ちなみに江田憲司衆院議員の妻でもある。また民放共同の動画サイトTⅤerの龍宝正峰社長も取締役となり、ネット強化を目指す姿勢が明らかだ。

フジテレビは金光修社長が1年で外れ、持株会社フジ・メディア・ホールディングス社長に専念する。百十余名の早期退職者を出したことが、日枝久取締役相談役の逆鱗に触れたという。

フジテレビ社長には傘下制作会社共同テレビの港浩一社長。港氏は「とんねるずのみなさんのおかげです」など1980年代の人気番組を手掛けた名プロデューサーだ。

また遠藤龍之介副会長は民放連会長就任が内定したが、フジの代表権は得られず。地方民放再編など業界は難問山積だが、「いちいち(日枝氏のいる)お台場にお伺いを立てないと何も決められないのでは」と心配される始末だ。

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フジテレビ本社

★「ポスト藤田」の行方

IT業界の草分けであるサイバーエージェント(藤田晋社長)が経営の節目を迎えている。かねてより集団指導体制の必要性を説く藤田氏が会長職に退くかもしれない。

同社の柱は広告とゲーム。中でも直近では、『ウマ娘 プリティーダービー』が大半の利益を稼いでいる。2009年からゲーム事業を統括する日高裕介副社長に対する藤田氏の信任は厚い。ゲーム事業はウマ娘に限らず、スクウェア・エニックス(松田洋祐社長)の『ファイナルファンタジー』や東宝(松岡宏泰社長)などの『呪術廻戦』と協業も積極的に行う。

祖業のネット広告は単なる代理店にとどまらず、顧客のデジタル・トランスフォーメーションの支援に乗り出す。全日本空輸(井上慎一社長)やヤマダデンキ(上野善紀社長)がその顧客となっている。もう1人の副社長である岡本保朗氏がこれら広告事業全般を指揮する。広告代理店銘柄としての比較でサイバーエージェントは一時期、電通(五十嵐博CEO)の時価総額を抜き話題となった。その立役者が他ならぬ岡本氏だ。

この2本柱に加え、藤田氏の進退とも関わるのがテレ朝との共同出資で運営する動画配信サービス「アベマTV」だ。創業来メディア事業にこだわる藤田氏は、テレ朝との合弁会社で自ら社長に就き指示を出す。今年11~12月のサッカーW杯では、アベマTVが全試合を放映するほどの気合いの入れようだ。

そんなアベマTVもようやく黒字化の道筋が見えてきた。同事業のナンバー2である小池政秀専務執行役員に後を託す可能性もあり、小池氏が「ポスト藤田」争いに加わるかもしれない。

ベンチャー気質を重視すれば、人事採用を管掌する石田裕子専務執行役員、マッチングアプリ子会社社長の飯塚勇太専務執行役員も候補になるだろう。麻雀好きで知られる藤田氏は、「牌」の打ち方を思案しているに違いない。

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