【28-国際】【覚醒した中国】激化する「同化政策」モンゴル族、朝鮮族が危ない|安田峰俊
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【28-国際】【覚醒した中国】激化する「同化政策」モンゴル族、朝鮮族が危ない|安田峰俊

文・安田峰俊(ルポライター)

国語科目の中国語化に反発

2020年秋、人口の約17%(約425万人)を少数民族のモンゴル族が占める中国の内モンゴル自治区で、大規模な抗議活動が広がった。理由は自治区の教育庁が打ち出した新たな言語政策への反発である。

従来、中国では自治区・自治州などにおいて少数民族の区域自治が認められ、各民族は自治地域内では自分たちの文字や言語を使用する権利や、民族教育を実施する権利を(少なくとも建前上は)保障されてきた。たとえば内モンゴルの場合、モンゴル族の民族学校ではモンゴル語と標準中国語の双方で教育(双語教育)がおこなわれてきた。

ところが今回、自治区内の民族学校においても道徳・国語・歴史の3科目の授業言語や教科書を2022年までに中国語に切り替えるとの方針が示され、現地の新年度開始時期にあたる2020年9月には、その皮切りとして国語科目の中国語化がスタートした。

これにモンゴル族は強く反発し、デモや抗議署名の呼びかけ、市民による公開書簡の発表、学生たちの授業ボイコットといったさまざまな方法での抗議がおこなわれることとなった。筆者の身近なところでも、モンゴル族の大学教員が、中国で普及しているチャットアプリ「微信」のモーメンツに政策への不満を書き込むなどの動きが見られた(投稿は数時間後に削除された)。

対して内モンゴル自治区公安当局は、デモ参加者や授業ボイコット学生の保護者など数百~数千人のモンゴル族を拘束。首府フフホト市では、取材中のアメリカ人記者が一時拘束される事態も起きた。

2013年の習近平政権の成立以来、中国では統治体制がいっそう強権化している。前任の胡錦濤時代に多発した少数民族の騒乱や、インターネット上を含めた政治批判などは、厳しい取り締まりのもとで激減している。それにもかかわらず、今回の内モンゴルで大規模な抗議運動が広がったのは「異常」な印象すら感じさせる。

また、同様の騒ぎは内モンゴルだけではない。韓国のKBSラジオの報道によれば、北朝鮮との国境地帯にある延辺朝鮮族自治州においても、朝鮮族(中国国内に「少数民族」として居住する朝鮮半島系住民)の民族学校において中国語教科書が使われるようになり、やはり反発と戸惑いの声が出ているという。

もっとも実のところ、内モンゴルや延辺と同様の双語教育政策の変更、すなわち実質的な漢民族への同化教育の推進は、すでに2017年から新疆ウイグル自治区(翌年にはチベット自治区でも)において実施されてきたものでもある。

ただ、ウイグル族やチベット族は伝統的に中国国家への帰属意識が弱く、民族独立を望む傾向が強かったり敬虔な宗教信仰を持っていたりすることから、中国当局からは特に重点的に圧迫を加えられやすい存在だ(事実、新疆で100万人規模のウイグル族が収監されているという強制収容所のような露骨な民族抑圧施設は、現時点まで他の少数民族地域では確認されていない)。

ゆえに中国国内の他の少数民族は、これまで新疆やチベットの状況を対岸の火事のように眺めてきた面があった。

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