見出し画像

【イベントレポ】メインテーマは「変革」 新しい“価値”と“未来”を創造する!

やるか、やらないか ——。新しい「価値」を創造し、新しい「未来」を切り拓く、ビジネスモデル変革の最前線について実践者が熱く語ったオンラインイベント「メインテーマは『変革』 」が9月30日に開催されました。登壇者たちは何を語ったのか。当日の様子をレポートします。

◆自社のビジネスモデル再構築のヒントは異業種に隠れている

冒頭を飾る基調講演を行ったのは、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授の山田英夫氏。「逆転のビジネスモデル:変革と課題」というテーマを掲げて語った。

コロナ禍によってさらに営業利益率が下がる現在、日本企業に求められるのは、成熟業界におけるビジネスモデルの再構築。その成功例として、いくつかの企業のケースを挙げた。

不動産業界からは、スター・マイカ。同社は、同業者が避けていたオーナーチェンジに特化し、業績を伸ばした。賃貸中の中古マンションを空室より25%安い価格で購入し、賃貸中は家賃収入を得、借り手の退居後は、空室価格に戻り、自社でリフォームし転売するという手法を確立した。また、バス会社の車両を需要に合わせて動員することで業界全体のレベニュー・マネジメントを行った楽天バスサービス、リトレッド=再生タイヤ事業をソリューション化することで、顧客のコスト削減に貢献したブリヂストンの事例が紹介された。

ビジネスモデルを再構築する場合は、同業ではなく、異業種に着目するのがよいという。ビジネスモデルの代表例が、ジレットモデル。これは、製品の本体を安価に設定し、付随する消耗品を継続的に購入してもらうことで稼ぐという戦略である。剃刀メーカーのジレットが、柄を安く売り、替刃で収益を上げたことから、この名がついた。キヤノン・エプソンにおけるプリンターとインク、栗田工業における水処理プラントと薬品など、ジレットモデルは他業種にも普及している。

画像6

早稲田大学大学院 経営管理研究科(ビジネススクール) 教授
山田 英夫氏

いざビジネスモデルの再構築へと踏み出した際に生じる課題には、既存モデルとのカニバリゼーションへの対処、既存の評価尺度が新たなモデルの障害となること、新モデルが瞬く間にレッドオーシャンになってしまう同質化のリスクなどがある。

同じ課題に悩んでいる異業種企業から発見を得る際は、公開情報の中にヒントが隠されていることが多い。そのヒントに気づいた上で、その会社のビジネスモデルを抽象化し、自社のビジネスに移植すべし。山田教授はそのように結論を述べた。

◆データやデジタル技術の活用で顧客接点の状況を改善

「迫られるビジネス変革 データで生み出す新たな収益」と題し、テーマ講演①を行ったのは、日本オラクル株式会社 理事 クラウド・アプリケーション事業統括 CXクラウド事業本部 本部長の桑野祐一郎氏。DX(デジタルトランスフォーメーション)、つまりデータやデジタル技術の活用により、企業における顧客接点の状況を改善することが業務だ。

い

日本オラクル株式会社
理事 クラウド・アプリケーション事業統括
CXクラウド事業本部 本部長
一般社団法人CRM評議会 理事
桑野 祐一郎氏

現代特有の課題の山積、テクノロジーの変化、新しい企業ならびにビジネスモデルの参入により、ビジネス環境は急激に変化している。それに伴い、企業戦略も変化を迫られる。経営戦略サイクルは中・長期から短期・超短期となり、販売戦略で重視されるのは製品の優位性から変化への対応性へと変わり、その結果、経営においては、従来のごとく生産性向上および利益追求ではなく、売り上げ拡大への革新性が求められるようになった。

今や、「所有する」時代の終焉も近いと囁かれる。サブスクリプションのマネタイズ戦略の3つのポイントは、顧客を増やすこと、永く使ってもらうこと、そして利用領域・利用数を増やすこと。顧客と直接つながることが肝要なのだ。

D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の最近の成功例に、「Disney+」がある。コロナ禍によりテーマパーク事業などが不振に陥ったディズニーだが、米国において昨年スタートしたこの動画配信サービスでは、従来にない顧客との接点が生まれた。ゲストIDと視聴履歴とのリンケージに、新たなマーケティングの可能性を見たのだ。

日本オラクルでは、企業の有する膨大なデータを活用するカスタマーインテリジェンスプラットフォーム「CX Unity」を提供している。拡張可能かつ安全なプラットフォームでデータを集め、正しく有効化することで、企業は売り上げを伸ばすことが可能となる。

また、同社では毎月、ビジネスゴールを達成するための戦略的ワークショップ「Oracle NEXT」を行っている。現在はリモートで開催中のこのイベントには、ビジネスに関するさまざまなヒントが詰まっているという。

◆ニューノーマルの時代仕事に求められる思考法は?

「ニューノーマル 賢く楽しく乗り切る仕事術」という演題でテーマ講演②を行ったのは、KPMGコンサルティング株式会社の松本剛氏。

う

KPMGコンサルティング株式会社
マネジメントコンサルティング統括パートナー
松本 剛氏

今までとは異なる発想・価値観を持つ企業の代表例として松本氏が挙げたのが、少額短期保険のJustInCase。同社の販売する「わりかん がん保険」は、保険金は一律定額の80万円で、加入者全員において、壮大なゴール設定と社会的な意義が鍵となっている。

ニューノーマルの時代においては、仕事に臨む心の整え方が大事。最近では、働き方改革の一環として副業を容認する企業が増えたが、副業は、その仕事内容自体による充足感を得やすく、また家計の補助ともなるので、心の安定につながるという。

よい組織作りの土台に必要なのは、心理的安全性。換言すれば、「言いたいことを率直に言える風土」のことだ。リモートワーク環境下における心理的安全性担保のコツとしては、個々の役割の明確化、ITを駆使したマネジメントの見える化、メンバーの存在を承認するマネジメント、そしてクイックレスポンスなどがあるという。

会社のあり方そのものにも、変革が訪れつつある。本来、会社および指導者が経営において判断基準とすべきは、「結果を出しているか?」ではなく「アプローチが最適か」。そして、「橋を架けろ」と一方的に命令するのではなしに、「川を渡る方法を考えよう」という風に目的を共有することが肝要。そのためには、異なる担当者がプロセスの一部を請け負う縦割り組織から、事業を横断する形で工程の責任を負うプロセスオーナー制へと移行することが求められる。それ以外にも、変革推進するためのステップなどが紹介された。

去る9月、伝説的コンサルタント、マイク・ウォルシュの著書『アルゴリズミック・リーダー 破壊的革新の時代のマネジメント』が日本経済新聞出版社より刊行された。松本氏が監修し、KPMGジャパンが翻訳を手がけたこの一冊には、貴重な知見が満載だ。

◆日本マクドナルドを復活させたビジネスの秘策

特別講演①のスピーカーとして招かれたのは、株式会社ゴンチャ ジャパン代表取締役会長兼社長兼CEOの原田泳幸氏。アップルコンピューター、日本マクドナルドホールディングス、ベネッセホールディングスの社長やCEOを歴任した、経営について知り尽くす人物である。同氏は、「経営変革 成功と失敗の本質 ~意識と風土を変える、リーダーの真価~」と題して熱弁を振るった。

え

株式会社ゴンチャ ジャパン
代表取締役会長 兼 社長 兼 CEO
原田 泳幸 氏

自らの成功例として語ったのが、日本マクドナルドにおける業績のV字回復策について。氏は、2004年、同社のトップに就任した3カ月後に、それまで7年にわたり続いていたダウントレンドをプラスに転じさせた。

その際に取り組んだのが、人事システムの変革。年功序列廃止、ジョブポスティングや成果報酬給与制度の導入、残業ゼロの実現、女性管理職の登用などを断行したのだ。店舗クルーの離職率を下げることも喫緊の課題だった。そのために、クルー特典を強化したり、クルーの控室を客席同様の楽しい空間に整えたりという施策を行った。

価格政策においては、デフレに逆行するかのごとき試みに打って出た。「Big America」と銘打ったシリーズは、バーガーが単体で740円という強気の設定。しかし、本格派の味が功を奏し、ヒットを記録した。CEO在任中は、8年間に6回の価格改定と地域別価格導入を行い、業績向上に寄与したという。また、10年には全店舗の約12%に当たる433店の戦略的閉店を発表。結果的にキャッシュフローを改善させた。

講演の掉尾を飾ったのは、「原田語録」の抜粋版。〈非常識を常識にすることがビジネス〉〈部下から学ぶことのない組織は死んだも同然〉〈顧客のわがままはアイデアの生みの親〉〈知識と経験が想像力と改革力の障害〉など、多数の金言が紹介された。

◆「ゼロトラスト」の活用でデジタル変革のための情報を守りコストを削減する

テーマ講演③には、「デジタル変革のための基盤とは? -ゼロトラストで生き残る」と題し、マクニカネットワークス株式会社第4営業統括部 第1営業部第1課の鈴木富士雄氏が登場した。

お

マクニカネットワークス株式会社
第4営業統括部 第1営業部第1課
鈴木 富士雄氏

「ゼロトラスト」とは、企業の有する情報資産をIDなどによって防御するクラウド時代の新しいセキュリティモデルのこと。新型コロナウイルスの影響などもあって、さまざまな情報が社内のサーバからクラウドへと移管されている現在、その重要性は増している。

ゼロトラストとは、特定の製品名ではない。ユーザー認証、動的セキュリティ、ゼロトラストネットワークアクセス、継続的な解析・可視化・自動化など、さまざまなベンダーの提供するサービスを最適な形で組み合わせたBest of breed(ベストオブリード、良いとこ取り)モデルのソリューションのことである。

マクニカネットワークスの取り扱うサービスには、アクセス情報をクラウドで管理するIDaaS(アイダース)、グローバルセキュリティ管理とアプリ別経路防御が可能なSASE(サーシー)、端末の状況を管理するEMM(イーエムエム)、EDR(イーディーアール)、システム利用状況をしっかり把握するSIEM(シーム)などがある。

最新の暴露型ランサムウェアは、機密情報をネット上に公開して脅迫を行う。最近、この手の犯行は、リモートアクセスサーバの脆弱な部分を狙って侵入するという。また、身代金の高額化、中小企業や海外拠点を狙った攻撃の増加も指摘されている。ゼロトラストは、このようなリモートワークセキュリティ対策に有用だ。

ゼロトラストの導入は、ビジネスコスト削減に役立つ。例えば、社内ネットワーク機器を撤廃し、クラウドのサービスを導入したことで、約1,000万円のコストカットに成功した国内企業の事例もあるという。

マクニカネットワークスでは、ゼロトラストへの移行の検討から実際の運用に至るまで、丁寧な支援を行っている。個々の企業向けのゼロトラスト勉強会も開催しているので、利用してみてはいかがだろうか。

◆イノベーションは誰を幸せにしているのか?

特別講演②は、アーティストのスプツニ子!氏が語る「『スぺキュラティブ・デザイン』未来を問題提起する」。同氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教、東京大学生産技術研究所特任准教授を歴任し、現在は、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授を務めている。

画像6

アーティスト/東京藝術大学 美術学部デザイン科
准教授
スプツニ子! 氏

最初に、テクノロジー界隈では「Let’s make this world a better place!(もっとよい未来を!)」という言葉をよく聞くが、それを実現するイノベーションは誰のためになっているのかという疑問が投げかけられた。そもそも、「よい未来」とはひとつではないのだと。同質性の高い社会や組織では、それが見えなくなってしまうのだ。

イノベーションが悪夢を導いた例として挙げられたのは、パンチカード式コンピューター「ホレリス」がナチスドイツのホロコーストに利用されたという歴史。

また、低容量ピルの承認が国連加盟国中最も遅くなったり、無痛分娩の普及率が低かったりという、日本におけるジェンダーバイアスの例も紹介された。

AIに潜む陥穽についても、興味深い話を披露。アマゾンが使っていた採用AIツールは、女性の雇用に消極的だった過去のデータをラーニングしており、自動的に女性を減点する傾向を見せた。そのため、同社はこのツールの使用を停止したという。

演題に掲げられた「スぺキュラティブ・デザイン」とは、問題提起・議論するデザインのこと。その一例となる作品が、スプツニ子!氏のMITの研究室の学生であったアーティスト、長谷川愛による「(Im)possible Baby」だ。

実在する女性同士のカップルのDNA情報から、2人の間に生まれ得る子どもの容姿や性格などを予測し、家族写真を制作。さらに、その制作過程や科学者などへのインタビューを収めた映像、加えてこの企画に対するSNSでの賛否両論までが作品の一部となっている。

人の発想が変われば、世界は変わる。自分はどんな未来を目指すべきか、そんなことを考えさせられる講演であった。

◆アーカイブ動画のご案内
本カンファレンスのアーカイブ動画を期間限定にてご覧いただけます。
ご視聴をご希望のお客様は下記URLよりお申し込みください。

申込期限 11月20日(金)
 
https://bunshun.smktg.jp/public/application/add/263
この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
9
シェアしたくなる教養メディア。100年近くの歴史がある総合月刊誌「文藝春秋」が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツを毎日お届けします。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。