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アレルギー「即効性のある薬は『中毒』に注意」木村百合香(東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長)

文・木村百合香(東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長)

木村百合香医師 (3)

木村氏

自分に合った薬を見つけるには

一言で「アレルギー」といっても、種類や症状は人によって様々です。そのためアレルギーに対する薬は、どれか一つの症状のみに効果があるというよりは、「鼻炎とぜんそく」「蕁麻疹と湿疹」など、いくつかの症状にオーバーラップして効果を発揮するものが多いです。

耳鼻咽喉科で取り扱う薬は、主としてくしゃみ、鼻水に効く第2世代抗ヒスタミン薬だけでも10種類以上あります。主として鼻づまりに効くロイコトリエン受容体拮抗薬トロンボキサンA2阻害薬、全般的な症状に効くステロイド点鼻薬Th2サイトカイン阻害薬などを組み合わせ、処方します。

例えば花粉症のアレルギー性鼻炎で医療機関を受診された患者さんがいるとします。診療ガイドラインでは、三大症状(鼻閉、鼻汁、くしゃみ)が起きている時間が、1日のうちどの程度を占めているのかによって重症度が定められていて、重症度に応じて薬を選ぶ形になっています。

軽症のアレルギー性鼻炎なら、第2世代抗ヒスタミン薬かステロイド点鼻薬、症状に応じてどちらか1剤を使います。中等症で鼻水がひどい時には第2世代抗ヒスタミン薬とステロイド点鼻薬を、鼻詰まりがひどい場合は、これに加えてロイコトリエン受容体拮抗薬を使用します。重症の時には、中等症で使用する薬に加えて、抗IgE抗体薬や短期間の点鼻血管収縮薬経口ステロイド薬を検討します。効果があれば継続、効果が乏しいようなら内容を変更することで、その人に合った薬を見つけていく流れになります。

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自分に合った薬を見つけるには、効果だけではなく、副作用などを含めて慎重に検討する必要があります。ここでは、軽症、中等症、重症と、それぞれで使われる薬の注意点を説明しましょう。

軽症の患者さんに処方される薬の中で、副作用があるものとしてよく知られているのが、抗ヒスタミン薬です。特に、1950年代から80年代にかけて出回った第1世代の抗ヒスタミン薬は、眠気、口渇、便秘、前立腺の病気がある人には尿閉、緑内障の人には眼圧の上昇、小児には熱性けいれんなど、多くの副作用のリスクがありました。

特に眠気の副作用は大きく、車の運転や機械操作をする人は、就業前に薬を飲むことができませんでした。このグループに分類されるレスタミンという薬は、のちに副作用の眠気を逆利用し、睡眠改善薬「ドリエル」として新発売されたほどです。

しかし、第2世代の抗ヒスタミン薬は、使いやすさが格段に高まりました。副作用の眠気も大きく改善され、軽くなっています。中でも、アレグラ、クラリチン、デザレックス、ビラノアの4剤については、国土交通省航空局が示した指針の中で、「眠気の副作用が出る危険性が低い」として、服用後に航空機を操縦することも許されたほどです。

もし第1世代の薬を処方されたら、なぜ第2世代ではなく旧式の薬なのか、理由を尋ねるべきです。

即効性が快感に……

点鼻薬はどうでしょうか。中等症で処方される点鼻薬は、ステロイド薬のみの点鼻薬(ナゾネックスアラミストなど)があります。ステロイド薬と血管収縮薬を組み合わせた点鼻薬(コールタイジン)もあり、効果だけを見るとコールタイジンのほうが勝っているのですが、使用の際には十分な注意が必要です。

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血管収縮薬を組み合わせた点鼻薬は、素早く炎症が治まるので楽になるのは事実ですが、これを長期間連用すると、薬剤性鼻炎と呼ばれる状態に移行してしまうことがある。一種の「中毒」のような症状です。

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