見出し画像

吉本隆明 「いちばん低いもの」で 糸井重里 100周年記念企画「100年の100人」

『共同幻想論』などで一世を風靡した思想界の巨人・吉本隆明(1924~2012)だが、コピーライターの糸井重里氏は、そんな彼の意外な日常生活を目撃していた。/文・糸井重里(コピーライター)

語り部・糸井重里

糸井氏

「思想界の巨人」というあだ名を、ご本人はどう思っていたのか、いまさら冗談のように聞いてみたいという思いがある。

「僕は、ふつうに生きている人、あるいはそういう生き方をすでにやっている人の生き方が、いちばん価値ある生き方だと、理想としています」。「ほぼ日」の創刊5周年記念の講演で、吉本隆明さんはこうしゃべりはじめた。そういう人を100点だとすると、その価値からいちばん遠いところにいるマルクスのような人が0点ですというふうに話は続いた。自身については、器量がなくて「中間ぐらい」と採点していた。

ふだんの世間話で、これに近い内容のことを、ぼくは吉本さんの口からいちばん多く聞いた気がする。

吉本隆明

吉本隆明

吉本ばななさんが、「父から唯一教えられたこと」が「人が集まったときには、いちばん低いものでいなさい」ということだったとどこかで言っていたが、そのこととも通じているように思える。子どもに教えるばかりでなく、日常生活のなかの吉本さんは、それをいつでも実践していたようだった。

続きをみるには

残り 317字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください