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高3男子「10人に1人」がSNSで性的嫌がらせを経験 被害までの3つのプロセスとは

 子どもに、何歳からスマートフォンを持たせればいいのか。SNSの利用をどこまで許容するか。悩む親は多い。ルポ『つけびの村』が話題を呼んだライターの高橋ユキさんもその一人だ。親だけではない。SNS事業者も、度重なる被害に危機感を募らせている。(過去の連載はこちら)

 SNSで出会った相手から裸の画像を要求される、画像を送った後に会うことを求められ望まない性行為に至る……。児童によるSNSの利用が事件の入口となるケースは年々増加している。

 子どもたちがこうした性犯罪に巻き込まれるまでに、オンライン上でどのようなやりとりをしていたのか。今春、SNSをめぐる児童の性犯罪の実態調査をした東洋大学社会学部社会心理学科教授の桐生正幸氏は、「被害に至るまでのプロセスには3つの段階がある」と分析する。

「前期、転換期、発展期とそれぞれ名づけましたが、前期はオープンなところでターゲットを物色し、アカウントをフォローしたり、コメントをしたり、また『いいね』などのアクションにより、相手を気持ちよくさせる。そうすると相手も、熱心に自分の話を聞いてくれる、信頼できるな、と思うようになってきます。信頼関係を構築したところを見計らって、性的な写真や動画を要求する。これが転換期です。

 転換期での手口も巧妙です。例えば『下着の写真送って』と伝えて、断られると『だってアイドルだって下着の写真出してるよ』とか『以前付き合った子はすぐ送ってくれたけど、君はちょっとおかしいんじゃないの』と不安を煽るなどして、送らせるように仕向ける。こうした巧みな要求の結果、被害者が動画像を送ると、より過激な写真や動画に加え、性的行為の要求を行うようになります。これが発展期です」

 ショートムービープラットフォーム「TikTok」を運営するTikTok Japanは、有識者や関係省庁を招き定期的にイベントを開催している。今年4月には「SNSを起因とする性被害の防止のために〜対策編〜」と題し、企業としてSNSによる性被害をどう防ぐかというテーマで討論がなされた。

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 同社は青少年の安全な利用に力を入れており、ペアレンタルコントロール機能(時間帯制限、およびフィルタリング機能)の強化といった未成年保護に重点をおいたアプリ改良、TikTok LIVEを活用した啓発活動など、さまざまな対策を講じている。桐生氏は、実態把握にもつとめる同社から依頼を受け、未成年者がSNSを介して遭遇する性的犯罪被害の調査を行った。その結果見えてきたのが、先の3つのプロセスである。

 今年1月から3月にかけて行われた調査は4項目。1つが、小中学生の保護者に対する性犯罪被害調査。次が、高校生以上の未成年者らに対する性犯罪被害調査。いずれもウェブにて回答を求めた。3つめは、16歳以上の男女に対するSNSを使用した性加害行為や逸脱行動についての調査。最後が未成年の性犯罪被害についての相談業務を行っているNPO法人に対する聞き取り調査である。この結果は「日本のSNSを起因とした児童の性犯罪に至るオンライン上でのコミュニケーションとプロセスに関する研究」と題した報告書にまとめられ、SNS事業者が具体的に、かつ積極的に対策を講じるための基礎資料として発表された。

小中学生も性の対象

 小中学生の保護者に対する調査では、1112名の回答者のうち40名が「性的な事に関する逸脱行為、犯罪行為など」の有無について「あった」と回答。その多くが、知り合い、ないし見知らぬ人から写真や動画を要求されたというものだったが、元交際相手からのリベンジポルノという事案も複数あった。さらに、被害の実態に関する調査であるものの、小中学生の加害行為についても回答があり、主に性的な悪ふざけのコメント、写真や動画のSNSへの投稿、SNSを介したポルノ動画や写真の収集……といった行為が保護者に確認されているようだ。

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