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宮本亞門 それでも上を向いて歩こう|特別寄稿「#コロナと日本人」

新型コロナウイルスは、世界の景色を一変させてしまいました。文藝春秋にゆかりのある執筆陣が、コロナ禍の日々をどう過ごしてきたかを綴ります。今回の筆者は、宮本亞門氏(演出家)です。

宮本亞門カラー (1)

アメリカで感じたコロナの脅威

コロナの脅威が日本にとっても他人事でないと感じたのはアメリカでのことでした。2月中旬から約3週間、新作ミュージカル『The Karate Kid』の読み合わせのため、ニューヨークに行っていました。一部の州で緊急事態宣言が出されていたこともあり、ダイヤモンド・プリンセス号のニュースにはニューヨーカーたちも不安を覚えたようで、「日本は大丈夫なのか?」とよく聞かれました。

仕事でしょっちゅう訪れるニューヨークは僕の第二の故郷。東京に戻ってからも現地のニュースをチェックしていると、ブロードウェイを閉鎖するとの情報が飛び込んできて、「まさか」と目を疑いました。あそこはニューヨークで最も莫大なお金が動くところ。芸術や文化はもちろん、シビアにビジネスを追求するあの場所では、公演の中止という判断は最後の最後まで下されないだろうと踏んでいたのです。当然、『The Karate Kid』も中止になりました。

帰国して休む間もなく、今度はドイツの劇場での『蝶々夫人』の上演のため渡航準備をしていたのですが、早々に「Nein(No)」を突きつけられ公演は延期に。僕の抱える舞台の予定は、白紙になってしまいました。

そして自粛要請です。僕らのようなエンタメといわれる分野で仕事をする人間にとっては、「自粛」という言葉が一番つらかった。

その頃日本では、まだアメリカやヨーロッパほど感染者は多くありませんでした。公演は中止にすべきなのか。それとも予定通りお客さんを迎えるべきなのか。稽古中の役者とプロデューサーの間に亀裂が走ることもあったと聞きます。それぞれに自分の置かれている立場があり、みんなにとってベストな選択なんてなかった。いっそのこと、誰かにはっきりと「だめだ」と言ってもらえれば楽でした。

そもそもこの業界の人々は、何か大きな災害や事件が起こると一番先に悩むんです。生きるか死ぬかのときに歌なんて歌っている場合なのだろうか。ほかにもっと人命に関わる大切な仕事があるのではないか、と。

自粛期間を「創造的休暇」に

だからこそ僕は、演出家という立場で何かしたいと思い、「上を向いてプロジェクト」を始めることにしたのです。

このプロジェクトは、坂本九さんの往年の名曲「上を向いて歩こう」を何人もの人々が歌や踊りで表現し、それを自宅などで撮影した動画を一つに繋いでいくというもの。これには“商売”をからめたくなかったので、個人で始めることにしました。

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