【17-政治】【菅新政権の課題】ベーシック・インカム=健康で文化的な最低限度の不労所得|小飼弾
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【17-政治】【菅新政権の課題】ベーシック・インカム=健康で文化的な最低限度の不労所得|小飼弾

文・小飼弾(プログラマー)

特別定額給付金とベーシックインカム

ユニバーサル・ベーシック・インカム(Universal Basic Income 以下UBI)という考え方があります。漢字にすると「全員一律一般定額給付金」。単純明快ですがこれを全て満たす給付金というのは未だ実現したことがありません。2020年にコロナ禍対策として実施された、住民基本台帳に記載されている人全員が1人10万円を受け取れる[特別定額給付金]はそれに最も近い施策でしたが、一時金であるため一般とは言えず、また世帯主による申請が必要だったため「全員一律」という要件は満点になりません。ましてやこの施策を受けて竹中平蔵氏が提案していた「ベーシック・インカム」は「所得制限」にしろ「あとで返す」にしろUBIのベーシック=基本に真っ向から対立するものです。

拙著『弾言』で紹介して以来、筆者はずっとUBIを推してきましたが、なぜそれを推すに至ったか、それに最も近い施策を日本に住む最も多くの人が体験した今、改めて紹介します。

不労所得こそベーシック

全員一律ゆえ、UBIは不労所得です。この時点で倫理に反しているように感じる方も少なくないでしょう。憲法第27条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と明記されている日本において、所得というのは勤労の代価であって、何もしないのにお金をもらうのはイカんどころか違憲なのではないか?

しかしここで改めて経済=ヒトの営みを総合的俯瞰的に見てみましょう。ヒトが生きていく上で最も基礎的=ベーシックな産物といえば、エネルギーと食物。しかしそのどちらも生産しているのは人ではありません。化石燃料にせよ再生可能エネルギーにせよ生成したのは太陽ですし、その太陽エネルギーを使って水と炭酸ガスをデンプンにしているのは穀物。ここにおける生産者とは太陽や作物であって、ありていに言ってヒトは管理者。従属栄養生物であるヒトが生産者を自称したら、「働いて食ってるなんて台詞は10億年早い」と植物に笑われそうです。

経済にはその根底においてヒト以外が生産したものが必然的に含まれていて、それらは誰のものでもない以上、それに相当する分は均等に分配することこそ自然ではないでしょうか?

実際金持ちがなぜ金持ちかといえば、自分自身ではなく財産が稼いでいるから。ほとんどの人はそれを知識として知っていても実感がまるで湧きません。日本の税制もそれを反映しています。累進課税なのは労働による所得だけで不労所得は分離課税で税率一定。その上税金以上に多額に納付されている社会保険料は定率どころか標準報酬が(2020年9月現在)月額139万円を超えたら定額、つまり料率はむしろ下がるとあっては、働いたら負けと言わざるをえません。

トマ・ピケティのr<gという不等式はそういうことなのです。「オレに仕事と給与をよこせ」と主張しているかぎりいつまでたっても万国の労働者は勝てません。団結して主張すべきなのは「オレにも不労所得よこせ」です。

「なら現金より現物を支給した方がよい」。不労所得問題の次に多いUBI批判がこれではないでしょうか。曰く「底辺の奴らは金もらっても酒飲むかパチンコ打つかしておしまい」。反論は2つあります。

一つは「何が必要かを知っているのは政府でなく自分」。コムギアレルギーの人がコムギをもらっても困りますが、同額の金ならアレルゲンの入っていないものを買えば済む話。現物支給はまた、パラダイムシフトに対しても脆弱です。仮にケータイが現物支給の対象とされていたら、スマフォの時代がきた途端不良在庫。実際ミニテルが各家庭に配布されたフランスでは、それでインターネットの普及が遅れました。

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