『東大王』紀野紗良さんが語った「東大の4年間と進路」卒業直前インタビュー
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『東大王』紀野紗良さんが語った「東大の4年間と進路」卒業直前インタビュー

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TBS『東大王』にレギュラー出演し、著書に『勉強「しなきゃ」が「したい」に変わる 成績が上がる学びの習慣』がある、東京大学農学部4年生の紀野紗良さん。北海道出身で東大受験を目指した辛さや受験生の頃に実家で設定した「スマホルール」の極意、『東大王』で憧れの鈴木光さんと出会って変わったこと、卒業後の進路についてじっくり伺いました。(聞き手・構成=秋山千佳/ジャーナリスト)

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紀野紗良さん(C)佐野円香/KADOKAWA

◆ ◆ ◆

――初の著書『成績が上がる学びの習慣』(KADOKAWA)が話題になっていますね。紀野さんが初めて東大に足を踏み入れたのは小学2年生の時で、キャンパスツアーに参加されたとか。それが東大を目指すきっかけになったのですか?

紀野 いえ、当時は自分が東大生になるなんてまったく思っていなかったです。テレビに出ているような東大生は、住む世界が違うというか、雲の上の存在という意識がありました。

――では、その時は観光のような感覚ですか。

紀野 はい。地元の北海道から東京へお友達のご家族と一緒に遊びに行って、劇団四季の『ライオンキング』を観るついでで時間があるから、と参加したような記憶があります。

――そうなんですね。雲の上の存在だった東大生になりたいと思ったのは、いつ頃ですか?

紀野 高2になる直前の春期講習から目指すようになりました。駿台予備校の選抜制の講習で、お手伝いに来た現役東大生たちが、受験のことや東大での学生生活について詳しく聞かせてくれて。「東大って魅力的だな」と思ったのがきっかけです。

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(C)佐野円香/KADOKAWA

――特に魅力を感じたことは何だったのでしょう。

紀野 東大は他大学と違って、1年生から2年生の途中までは全員が教養学部に所属して、文理問わず幅広い科目を履修できるんです。そこがいいなと思いました。

――その先の専門課程は、今いる農学部へ進学しようと想定していたんですか。

紀野 入学当初は決めていなかったです。実は大学受験でも、私立は法学部を受けていました。興味のあることが色々とあったからです。ただ、文転のほうが理転よりも楽なので、ベースは理系というのは揺るがない選択でした。

――それで東大は理科II類を受けたのですね。紀野さんの受験勉強のエピソードで、バレエのレッスン前にもストレッチしながらノートを開いていた、というお話が印象に残っています。

紀野 放課後は習い事が忙しくて、まとまった勉強時間を確保できなかったので、スキマ時間にコツコツと積み重ねるしかなかったです。そのあたりの工夫を、今回の本にまとめました。

――東大を目指す以前から、そうした積み重ねをされていたのですよね。当時のモチベーションは何だったのですか。

紀野 実は、中1の時から京都大学に憧れていたんです。お恥ずかしい理由なんですけど……私は和菓子が大好きなので、京都ならおいしいお店がたくさんあるじゃないですか(笑)。京都の風情が好きなのもあって、「京都の人になりたいな」と。そんなぼんやりした理由で志望していたので、結局、あまり偏差値の変わらない東大へ流れたのかなと思います。

――現役東大生から具体的にお話を聞く体験は、それだけ大きかったということですね。

紀野 そうなんです。東大生も京大生も身近にいない状態だったので、大勢の東大生から東大の魅力を語られると「なんてすばらしい大学だ!」と。洗脳ではないですけれども、感銘を受けてしまいました(笑)。

――なるほど(笑)。ご著書でもう一つ印象的だったのが、スマホの利用についてご家庭でルール設定をされていたという点です。今、受験生もそうですし、大人でもスマホとの付き合い方が難しいと感じている人が多いと思うので、少し詳しく聞かせてください。まず、携帯電話は何歳から持っていましたか。

書影帯あり

紀野さん初の著書『勉強「しなきゃ」が「したい」に変わる 成績が上がる学びの習慣』(KADOKAWA)

紀野 ガラケーは小1から防犯のために持っていました。北海道は車社会なので、公文など習い事の送迎のために電話をするくらいの使い方でしたね。高学年になると中学受験の塾に電車で通いはじめたので、同じ塾に通う子との待ち合わせに使っていました。

――小学生のうちは、あくまで連絡手段だったわけですね。

紀野 はい。スマホは中1の途中からです。スマホが普及しはじめた頃で、クラスメートも入学時点ではガラケーで、学年途中で替えた子が多かったです。

――ご著書によると、スマホは自宅リビングでしか使わない、というルールがあったとか。

紀野 中高と学校にはほぼ持っていかなかったですね。そういうルールを母が提案してきて、私が「いいよ」と答えて決まりました。当時は家で使うだけで充分だと思っていたので。あとは小学生の頃と同じく、習い事へ行く時に持っていくくらいですね。

――ご自宅ではどんなことに使っていたんですか。

紀野 友だちとLINEするという学生らしいことは普通にしていましたし、ゲームも結構好きだったので「ツムツム」だけはしていました。

――高校に上がっても、SNSはLINEだけですか。

紀野 はい。周りの子はインスタとかミクチャとかやっていたみたいですけれども、高校生のうちはまだいらないかなと自分で判断しました。

――周りがやっていることを自分だけやらないと不安になる、という子がいますけど、そういう不安はありませんでしたか。

紀野 インスタをやっている子がそんなにいないと思っていました。私が知らなかっただけかもしれないんですけれども……いや、そうなんだろうな(笑)。

――周囲に流されないタイプなんですね。高校生の頃は、スマホの使用時間は1日どれくらいだったのでしょう。

紀野 学習記録の時間を含めると、1時間ちょっとだったかなと思います。スタディプラスという勉強管理のアプリを高2の終わりから使い始めたので、勉強のお供にしていました。ただ、集中して使い続けるということはほぼなかったです。学習記録をつける時はスタディプラスだけを開くし、今日はゲームをたくさんやりたいという時は、1時間「ツムツム」ばかりやっていました。

――スマホの使い方は、大学に入って変わりましたか。

紀野 友だちと連絡を取ることが増えました。特にサークル(東大の謎解きサークル)でLINEやSlackがたくさん来るんです。

――即レスしなきゃ、というプレッシャーは昔も今もないですか。

紀野 全然ないです。私はマイペースなので、返したいと思った時に返すスタイルです。緊急連絡や仕事関連の連絡だったらすぐ返すようにしていますけれども、プライベートな会話だったら、その時している作業が落ち着いてから返すようにしています。

――お聞きしていると、スマホと上手に付き合って受験を乗り越え、今に至る感じがします。サークルの連絡がたくさん来るのは大変でしょうけど、東大生になれたからこそ縁があったサークルですものね。それに、他の大学へ行っていたら『東大王』出演もなかったわけですし。

紀野 そうですね。

――大学生活についても教えてください。東大は女子学生比率の低さ(学部生で19.7%)がニュースにもなりますが、学生生活を通して良し悪しを感じることはありましたか。

紀野 私のいる農学部は、理系学部の中では女子が多い(24.8%)のですが、それでも少数派です。女子の友だちが少なくなってしまうのは、あまりうれしくないところです。他大に進んだ中高の同級生が女友だちとよく遊んでいるのを見ると、いいなと思います。

――他大のほとんどは、東大よりうんと女子比率が高いですものね。

紀野 はい。最近困ったのが、卒業式の袴選びです。母から「東大の友だちと見に行けばいいじゃない」と言われたのですが、東大の女友だちで暇そうな人がいないので、一人で見に行きました。

――もともと女子が少ないうえに、皆さん忙しそうですもんね。

紀野 そうなんですよ。それぞれ目標に向かって、自分なりの時間の使い方をしているので。誘えば来てくれただろうと思いますけど、色々気にした結果「一人でいいや」となりました。

――ソロ活動が大学生になって増えたなという実感はありますか。

紀野 増えましたね。もともと一人でも全然問題ないタイプではありますが、基本一人でいますね。コロナ禍というのもあるかもしれません。大学はオンライン授業がメインで、研究室くらいしか行かない日々ですし。だから一人でご飯を食べるし、遊びに行くのも一人が多くなっています。

――コロナ禍で同じように思っている学生さんは多いかもしれませんね。紀野さんの場合はさらに、東大に女子が少ないという事情も絡んで。

紀野 そうなんですよ、私も女の子と一緒に遊びたいんですよ! でも、出会いがほぼないので……後悔しているのが、東大女子が多いサークルにも入ればよかったなということです。私が入ったサークルは他大の女子なら結構いて、その子たちと話すのもすごくうれしいんですけど、欲を言えば東大の女の子とももっと仲良くしたい。それだけに、『東大王』は女の子が多いのがとてもうれしいところです。

――サークルの代わりというか。

紀野 貴重な女友だちができました。

――紀野さんだけではなく、『東大王』女子メンバーも、東大に通う女性と友達になりたい……といったような同じ思いがあるのではないですか。鈴木光さんが『東大王』を卒業する時には、紀野さんに「妹ができたような気持ち」とおっしゃっていましたね。

紀野 はい。光さんや、“おかもっちゃん”こと岡本沙紀さんと、「東大は女子が少ないから、『東大王』のおかげでこうして会話できるのが貴重な機会だよね」と話したことがあります。

――やっぱり思うことは一緒なんですね。

紀野 一緒ですね。私だけじゃなくてよかったです(笑)。

――「姉」である鈴木さんから影響を受けたことはありますか。

紀野 光さんとは私が『東大王』に出はじめてから2年間ご一緒させてもらったんですけど、私がなかなかクイズが上達しなくて。もどかしい感情をできるだけ出さないようにしていたんですけど、収録後、光さんから「ちゃんと成長しているから大丈夫だよ」というLINEが来たことが何回もあったんです。

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(C)佐野円香/KADOKAWA

――紀野さんが感情を出さないようにしても、鈴木さんは汲み取ってくれた。

紀野 はい、細かいところまで見てくださっていたと感じます。自分も今、「プロジェクト東大王」(『東大王』に連動したParaviオリジナルコンテンツ)出身の子たちが入ってきた時にはできるだけ声をかけるようにしています。光さんから学ばせていただいたことを、後輩たちに還元していきたいなと思っています。

――素敵ですね! 番組以外でも会う機会はありますか。

紀野 女子会と称して、光さん、おかもっちゃんと3人でランチに行ったことがあります。おかもっちゃんも私も光さんのファンなので、「最近どうしているんですか?」とか、収録の時には聞けないような話をたくさんしました。

――たとえばどんなお話ですか?

紀野 詳しくは言えないですけど、基本的に進路についてです。お互いがどういう道に進みたいか、といった話です。光さんは、私たちが何を言っても「面白そうだね」と肯定的な反応をしてくれました。

――後輩でありファンでもある紀野さんからしたら、うれしい出来事ですよね。

紀野 はい。そもそも高校生の頃には、一緒にご飯に行けるなんて思いもしなかったですし。最近だと、光さんの司法試験の合格祝いをしました。『東大王』に出演されている(元フジテレビアナウンサーの)富永美樹さんのお家に、光さん、おかもっちゃん、私を招いていただいて。料理の上手な富永さんから教わって皆で料理をして、おいしいものを一緒に食べて。普段とは違う光さんを見られるという、ファンとしての喜びもありました。

――楽しそうですね。どれくらいの時間、一緒にいたんですか。

紀野 6~7時間はいたと思います。光さんが「『東大王』を今も見てるよ」と言ってくれたのが、特にうれしかったです。応援してくださって、ご自分でもテレビの前で一緒にやっているそうです。

――番組でのご縁が、番組卒業後も続いているのですね。

紀野 本当に宝物です。『東大王』の場合、学年も学部もバラバラなのが楽しいですね。クイズというつながりがありつつ、違うところもたくさんあるから、面白いんです。

――番組ではマント姿の紀野さんですが、大学3年生までお母さんにお洋服を買ってもらっていたというエピソードがご著書にあります。ファッションには興味を持てなかったですか。

紀野 中高生の頃から興味がなくて、勉強してこなかったので自分にはセンスがないと思っていたんです。でも収録に行く時など、変な格好はしたくないじゃないですか。

――では、ある意味でファッションも『東大王』がきっかけとなって関心が芽生えたと。

紀野 そうですね。番組に出るようになったのを機に、お化粧しないとな、と思い始め、それに追随して服もおしゃれにしなければ……という危機感が芽生えた形です。

――それまではお化粧もしていなかったですか?

紀野 今も大学へ行くのはすっぴんで平気です。基本的に研究、実験ばかりなので、おしゃれする必要はないですし。ただ、番組に出させていただくことによって「普通の人は外出する時にはお化粧をするんだ」と学びました。外食などお出かけの時には、お化粧するのがマナーなんだなと。大変お恥ずかしい話ですけど(笑)。

――いやいや。それでお洋服も、大学3年生からご自分で買いはじめたと。

紀野 はい。母に任せきりだったので、負担をかけているという思いもありまして。通販なら気が引けることなく買えますし、身長が152センチと低いので、小さいサイズの実店舗がないお店などを利用しています。少しずつ自分に似合う系統の服がわかってきたところです。

――いろんな面で、学びの多い大学生活を送ってこられたわけですね。大学の研究室では、どんな研究をなさっているんですか。

紀野 一言でいうと、環境問題解決に関する研究です。たとえば最近、スタバなどの飲食店で、ストローがプラスチックから紙になってきていますよね。このように化石燃料を使わない材料の基礎研究的なことをしています。ただ、私が研究していることは、紙ストローのように普及するのはだいぶ先の話にはなりそうです。30年後とか50年後とか。

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(C)佐野円香/KADOKAWA

――未来の素材を研究しているのですね。紀野さん自身、長いタイムスパンで先を見据えていらっしゃる。

紀野 そうですね。来春には大学院へ進学する予定ですが、その先どんな職業に就くにしても、社会貢献できるようなことをしたいと考えています。自分のすることによって、幸せになってくれる人が増えたらいいなというのはずっと思っています。

――社会貢献がキーワードなんですね。社会に出る前にやっておきたいことはありますか。

紀野 人との出会いを大切にして、誘われたらなるべく断らずにいろんなことをやってみようと心がけています。たとえば今、東大の先輩が立ち上げたオンライン個別指導サービスのアルバイト兼運営インターンをしています。それは自分が地方出身で、周りに塾がなくてもネットを通して憧れの先輩とお話しできるといいなと思っていたので。コロナ禍をきっかけに始まったサービスなのでまだ手探りですけど、私はコーチ兼マーケティング担当として、特に地方の子たちの助けになりたいです。

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