見出し画像

塩野七生 全寮生活の効用 日本人へ230

文・塩野七生(しおのななみ)

幕末とそれにつづく明治の時代に生きていたら、さぞかし面白かったろう、と思う。男たちは、また女でさえも、脱皮という名の成長をつづけていかざるをえない時代であったのだから。1862年、藩主の父久光の行列の前を乗馬姿の英国人数名が横切ったのに激昂した従者たちが1人を斬殺し2人を傷つけた、世にいう生麦事件が起る。これには英国側も激昂し、翌年早くも英国艦隊は薩摩湾内に入ってきて、藩側が手も足も出せないでいる前で、湾内の防衛施設に徹底的な砲撃を与えた後で引き揚げていった。やられっ放しであったその時の鹿児島には、36歳の西郷隆盛も33歳の大久保利通もいたのである。

ところがそれと同じ頃、長州藩でも事件が起っていたのだ。下関沖を通過中だった外国船を砲撃したというのがそれ。このときの報復は翌1864年、英・米・仏にオランダの四国連合艦隊で為され、これまた長州側が手も足も出せないでいる前で、下関周辺の砲台という砲台が破壊されたのだった。

続きをみるには

残り 1,857字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください