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【全文公開】知の魅力を伝えるフィクション 池上彰さんの「わたしのベスト3」

ジャーナリストの池上彰さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。

池上さんver2

 大ベストセラーになったのは、活字版ではなくマンガ版。出版社の発想の勝利でしたが、高校生たちと、この本について話をしていたら、マンガ版は、文字通りマンガだけを読み、間に挟まれている活字の「おじさんの手紙」は読み飛ばしている生徒がいることを知って驚愕。活字をきちんと追って、考えながら読みましょう。

 若い人には、自分の今後の生き方を考える本であり、昔若かった人には、自分の生き方を振り返ることができる名著です。

 読後、「私はどう生きるべきだったのか」と独白してしまいそうになります。

『舟を編む』は、国語の辞書を編集するという、出版社の中でもとりわけ地味な仕事をしている人たちの物語。

 辞書を編集するのが、いかに大変なことか。でも、日本語の不思議さと魅力を知ることができます。

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 日本語は、こういう地道な努力を続けている人たちによっても守られているのだということを知ります。

 個人的には、この描写の出版社は音羽にあるのではないか、これは一ツ橋ではないか、それとも神田だろうか、神楽坂の店はあそこだろうか、などと想像を巡らしながら読むのが楽しみでした。紀尾井町の出版社は思い浮かべませんでしたが。

 最後に『博士の愛した数式』。

 事故の後遺症で80分しか記憶が続かない数学博士の家に、「私」が家政婦で派遣されます。博士と「私」と、「私」の息子の物語も楽しいのですが、博士が持ち出す数字や数式の数々に圧倒されます。数学を専攻する学生たちの気持ちが理解できるような気がします。

 素数に無理数に虚数に友愛数。数字の魅力の数々を知り、数学とはエレガントなものだと実感します。

 数学を嫌いになってしまう前の中学生にぜひ読んでおいてもらいたい作品です。数学の先生も、たまには小説を読んで教材にしましょう。



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