新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

【39-経済】【経済の新しい潮流】「モーダルシフト」で復活する貨物鉄道|長田昭二

文・長田昭二(ジャーナリスト)

労働形態の限界が追い風に

今回のコロナ禍では、マスクやトイレットペーパーが一時的に品薄になったことを除けば、モノが供給されずに困ったケースは少なかった。物流は、ほぼ通常通りに動いたのだ。

物流というとトラック輸送を思い浮かべるが、近年ドライバーの減少により、そのシェアは低下している。また、二酸化炭素排出量の多いトラックより、環境面で優れている鉄道や船による輸送を選ぶ荷主も増えている。こうした輸送手段の転換を「モーダルシフト」と呼び、その動きは近年拡大している。中でも一度に大量に、定時輸送ができる貨物鉄道を再評価する機運は急速に高まっている。

今から33年前の国鉄の分割民営化当時、貨物部門のみを受け持つことになった日本貨物鉄道(JR貨物)は、「いずれ潰れる会社」と見られていた。事実、民営化当初こそ黒字スタートだったが、その後は厳しい経営を強いられ、貨物駅跡地の再開発で得られる不動産収入に頼る状況が続いた。しかし、ここに来てモーダルシフトが進む中、本来の物流事業が再び脚光を浴び始める。JR貨物では鉄道事業部門が黒字転換を果たし、念願の株式上場も視野に入ってきた。

その割に、首都圏に住んでいると貨物列車を見かけない。じつは現代の貨物列車の多くは夜間に走っている。理由は大きく2つ。荷主側に「夜出して朝届く」というニーズが高いこと、もう一つは、大都市圏の通勤・通学時間帯は頻繁に行き交う旅客列車による過密ダイヤのため、貨物列車が走る余裕がないことがある。

昼間集めた荷物をコンテナに収め、夜までにトラックで貨物駅に運び込む。コンテナごと列車に載せると、列車は夜遅くに出発し、翌朝目的地近くの駅に着く。ここで再びトラックに載せ替え、午前中にはそれぞれの荷受先に届く――というのが一般的な流れだ。従来のように全行程をトラックが担当すると、コンテナの数だけトラックとドライバーが必要になり、ドライバーは長時間の運転を余儀なくされる。高齢化が進む日本で、この労働形態を継続するには限界がある。

その点、貨物鉄道ならたった1人の運転士が、最大で10トントラック65台分の貨物を、長距離にわたって運ぶことが可能だ。他にも貨物鉄道のCO2排出量はトラックの11分の1とエコの面でも優れている。こうした点が評価され、貨物鉄道に追い風が吹き始めていた。

生活を支えているのは貨物輸送

そして、私たちが貨物輸送の重要性に気づかされた事件が近年、2度起きた。一つは2年前、西日本を中心に大水害を引き起こした「平成30年7月豪雨」だ。被災したJR山陽本線では数カ所で線路が流され、100日間にわたって不通になった。JR貨物にとって関西と九州を結ぶ山陽本線は大動脈。ここを走る貨物列車は上下合わせて1日に54本に上る。JR貨物では、モノの流れを継続させるための必死の取り組みが行われた。不通区間をトラック・船に代替するルートを確保するとともに、列車を迂回運転して輸送した。普段は貨物列車が走らない山陰本線を臨時列車が走る姿は新聞やテレビのニュースなどでも報じられ、話題にもなった。

この続きをみるには

この続き: 1,313文字 / 画像1枚
この記事が含まれているマガジンを購入する
ピンチをチャンスに変える力――それが「教養」だ! これ1つで、小論文対策をしたい高校生、レポートに困っている大学生、豊富な知識を身につけたいビジネスマンまで幅広くサポート。教養人に必須のマガジンです。

【12月1日配信スタート】毎日、朝晩2本の記事を配信。2021年の日本、そして世界はどうなる? 「文藝春秋」に各界の叡智が結集。コロナ禍で…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。