日経平均3万円は通過点か、バブル崩壊の予兆か——米国株はメジャー、日本株はガラパゴス|成毛眞
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日経平均3万円は通過点か、バブル崩壊の予兆か——米国株はメジャー、日本株はガラパゴス|成毛眞

株価は3万円台を回復。でもそれで喜んでいいのか。/文・成毛眞(元日本マイクロソフト社長)

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▶︎結局、株を買うしかない。だから株価が上がるんだ、というのが、一応の説明にはなっているが、いずれにしろ、これは一過性の現象だと見ている
▶︎どうやって資金をつくるかと考えたときに、20年後が予測できる米国株への投資が有力な選択肢
▶︎日本株は今後上昇を続けるにはいろいろなネックがあり、さらに個別銘柄となると政治リスクの影響は大きくなる

日経平均3万円は一過性

2月15日、日経平均株価が1990年8月以来、約30年ぶりに3万円台を突破しました。改めてこの間の値動きを見ると、新型コロナウィルスの感染が拡大しつつあった昨年3月半ばに1万6000円台まで下落した後、株価はゆるやかに上昇し続けていたことがわかります。

コロナの影響で、観光業や飲食業を中心に日本企業は相当なダメージを受けているのに、なぜ株価は上がり続けているのか。さらにいえば、どこまで上がり続けるのか。

私はマクロ経済や株価の専門家ではないので、本当のところは正直わかりません。マイクロソフトの日本法人を退いた後、投資コンサルティング会社を立ち上げ、それなりにやってきましたが、やってきたのはベンチャー投資ですから、一般的な株価の世界とはかなり違います。

もちろん、あらゆる国で平常時にはありえない政策投資と経済対策をやった結果、過剰流動性による株高が起きたのはたしかでしょう。各国の中央銀行はお金をばらまいており、その行き先は、突き詰めると株、債券、不動産の3つしかありません。債券には限界があります。買われすぎると、金利が下がっていき、長期金利はマイナスになる。また不動産もリモートワークが進むとオフィス需要の減退が予測され、さらにいえば、海外の不動産を買おうにも渡航さえできない状況ですから、今は難しい。

結局、株を買うしかない。だから株価が上がるんだ、というのが、一応の説明にはなりますが、私はいずれにしろ、これは一過性の現象だと見ています。この後、「上がるのか、下がるのか」は「神のみぞ知る」としかいいようがありません。

だから最初に「わからない」と申し上げたわけですが、少し見方を変えて、「では、この状況で、我々はどう動けばいいのか」についてなら、少しお話しできることもあります。

私は『2040年の未来予測』(日経BP)という本の中で、私たちの衣食住をはじめテクノロジーや経済に至るまで、20年後に何が起きているかを、具体的なデータをもとに予測しています。ある意味では、この先1、2年のことはわからないが、20年先のことならわかる、というのがこの本のスタンスです。

日本株は怖い

「この先1、2年のことはわからないが、20年先のことならわかる」ということは、実は株価についてもあてはまります。

わかりやすいのはアメリカです。私の手元に、アメリカの代表的な株価指数であるダウ平均株価が初めて算出された1896年以来、今に至るまでの推移を示したグラフがあります。スタート当初のダウ平均は、30ドル前後でした。それから120年あまりが経った現在、株価はつい先日、史上最高値となる約3万11961ドル(2月24日)をつけました。ほぼ100年で1000倍です。

その間、もちろん暴落したこともあります。最も深刻だったのは1929年の世界大恐慌で、このときは株価が暴落前の水準に戻るまで、約30年を費やしました。戦後はキューバ危機、オイルショック、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマンショックと、5回の暴落がありましたが、いずれも5年ほどで元に戻りその後は上昇しています。

つまり米国株は長期スパンでみれば、ずっと上昇が続いており、今後、このトレンドが急に変わるという方が考えづらい。ですから1年後はわかりませんが、20年後には数倍、悪くても2倍くらいにはなっている可能性が高いと言えるわけです(ちなみに今から20年前、2000年ころのダウ平均は1万ドル前後)。

こうした状況を踏まえて、我々はどう動くべきなのでしょうか。

一昨年、いわゆる「老後2000万円問題」が世間を騒がしました。金融庁のレポートは年金による収入を夫婦で月約21万円とし、支出を約26万円とした場合、月々5万5000円程度の赤字が出るとしています。その前提にたつと「月々5万5000円の赤字が出たとしても、預貯金が2000万円あれば、30年間は無職でもやっていける」という理屈ですから、支出を金融庁の想定より減らせば、必ずしも2000万円なくてもいい。問題は収入、つまり年金です。政府の試算では、2019年に124兆円だった社会保障関連の総支出は、2040年には190兆円にまで拡大しています。そんな中で、月21万円の年金を維持できるかといえば、私は厳しいと思います。

だから、20年後のために、預貯金以外の金融サービスを使って、個人で老後資金をつくる必要がある。実は、それが金融庁の「メッセージ」でもあったわけです。

では、どうやって資金をつくるかと考えたときに、20年後が予測できる米国株への投資が有力な選択肢であることは言うまでもありません。

では日本株はどうかといえば、私だったら恐ろしくて買えません。

なぜなら最初に述べた通り、日本株は1990年代以降、低迷し続けており、株が上がったとはいえ、30年前の水準に戻っただけの話です。アメリカも中国も東南アジア諸国もこの30年でみんな資産を何倍にも増やしました。世界で日本だけが低迷を続け、大恐慌後のアメリカのように苦しんでいたのです。

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株式市場は沸いた

GPIFが持ち過ぎ

今回、3万円を超えたといっても、コロナ禍で史上最高値を更新した米国市場に引っ張られただけで、「日本株が上がった」とは言えないと私は思います。「これはバブルか」と問われれば、コロナで傷んだ実体経済から乖離しているという意味ではそうかもしれませんが、長いスパンでみれば、今までが低すぎただけ、とも言えます。

なぜ日本株だけが低迷するのか。それにはいくつか理由があります。

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