
100年後まで読み継ぎたい100冊 平松洋子「日本人の精神にふれる」
スキ
6
文・平松洋子(作家、エッセイスト)
日本人の精神にふれる
読み継ぎながら私が探りたいのは、“日本をつくってきたのはどういうひとたちか”ということ。その前提を踏まえ、まず宮本常一『忘れられた日本人』を挙げたい。宮本常一は昭和14年から全国津々浦々を歩いて常民の語りに耳を傾け、つぶさに記録した。本書に集積されるのは、西日本の村々に生きる古老の言葉と営み。明治・大正・昭和を通じ、日本人はこのようにして社会を形成、文化を継承してきた。そのなまなましいありさまによって、読む者は日本人の源流に引き戻される。あるいは、石牟礼道子『苦海浄土』。水俣病の現実を直視し、声なき声をあますところなく掬って昇華する石牟礼文学には、人間の尊厳がもうもうと狼煙を上げている。戦記文学として、最前線の戦地ビルマに送られた軍医詩人、丸山豊『月白の道』も忘れがたい。
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に幅広いテーマの記事を配信しています。政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、一流作家の連載小説、心揺さぶるノンフィクション……月額900円でビジネスにも役立つ幅広い「教養」が身につきます。
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。