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【47-経済】ホンダ・日産の経営統合は「絵空事」ではない|井上久男

文・井上久男(ジャーナリスト)

「CASE」という大波

2020年8月16日、英紙フィナンシャルタイムズが「日本政府関係者が昨年末にホンダと日産自動車の経営統合を模索していた」と報じた。両社は公式的には否定するものの、自動車産業の流れから見て両社が手を握る可能性はゼロではない。事実、水面下では協力し合える分野がないか話し合いを進めている。

ホンダは「フォーミュラ・ワン(F1)」から21年シーズンをもって撤退する。F1に投入している経営資源を電気自動車(EV)などの電動化投資に振り向けるためだ。

八郷隆弘社長が20年10月2日、記者会見して撤退を発表すると同時に「再参戦は考えていない」と語った。ここにホンダの四輪事業の苦境が隠されている。

自動車産業にはいま、100年に1度の大きな変革が押し寄せてきている。その一つが「CASE」という大波だ。インターネットと常に繋がる Connected(コネクテッド)、自動運転の Autonomous、ライドシェアなどの Shared、電気自動車(EV)など電動化の Electric の頭文字を組み合わせた言葉で、自動車会社はこうした分野への大きな投資を迫られている。

ホンダの四輪事業の営業利益率は19年3月期決算では1.9%にまで低落。実はこの数値は、日産自動車(2.7%)よりも低い。20年3月期はさらに悪化して1.5%に。直近の20年4~6月期はコロナ禍の直撃を受けて1958億円の赤字に落ち込んだ。

いまホンダは電動化への追加投資を迫られ、F1どころではないのが実態だ。ホンダは30年までに四輪車の世界販売のうち3分の2を電動車にすると発表しているが、主眼はエンジンとモーター併用のハイブリッド車に置かれていた。しかし、世界の環境規制はホンダの動きを上回る速さで進んでいる。

米カリフォルニア州は20年9月、35年までに同州内で販売される新車はすべて排ガスを全く出さない「ゼロエミッション車」にすると発表。英国は35年に内燃機関の新車販売を禁じる予定だ。特に欧州連合(EU)の二酸化炭素排出の規制が厳しい。21年からメーカーごとにEU内で売る全車種の平均で二酸化炭素の排出量を15年比で約3割削減させる。

ホンダは20年、初の量産EV「ホンダe」を欧州で発売し、規制に対応している。しかし、このクルマは1台売れば、大きな赤字になると言われている。電池のコストが高いことや、EVの生産に慣れていないことなどがその原因だ。

ここで日産との接点が出てくる。日産は10年、「リーフ」を世界初の量産EVとして発売し、累計で50万台以上売っている。開発や製造のノウハウが蓄積され一日の長がある。ホンダはEVシステムを日産から購入できないか検討している。

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