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令和日本のIT国家戦略

文・安宅和人(ヤフーCSO・慶應義塾大学教授)

 AI×データが、すべての産業と社会に組み込まれる時代が到来した。

 この戦いで世界をリードしているのが、GAFAを擁する米国勢、そしてBATHを抱く中国勢である。日本は、高度なテクノロジーを持つ海外からの“黒船”が来ていることを皮膚感覚で実感できず、何ら有効な手を打てていない状況にある。

 日本を再び明治の時のように刷新するにはどうすべきか。

 少子高齢化が進む令和日本が生き残るための、IT戦略とは。ヤフーCSOである私は、テクノロジーとビジネスに深く関わる立場から早くに危機感を抱き、省庁、経団連などへ「国家戦略としての刷新の方向性」をこの5〜6年様々に提案して来た。その内容は『シン・ニホン』と題して出版予定だが、本稿ではそのエッセンスをお伝えしようと思う。喫緊にやるべきことは、大きくふたつ。「人材育成」と「再配分」である。

全ての大学生にAIリテラシーを

 そもそもなぜ日本はここ10〜15年のあいだに、IT競争で世界に抜き去られてしまったのか。第1に圧倒的にデータ量が足りない。さらに規制が厳しく、世界を変えている Uber/Airbnb 的なサービス一つ進まない。また、データ処理コストは米国の5〜10倍と割高でコスト競争力がない。データ×AI人材も育っていない。

 とはいえ、ここからの変化は情報の識別などの“入口”系ではなく、“出口”にあたる個別の産業領域で起きる。幸い、自動車をはじめ日本の産業の多くはプレゼンスが強く十分に希望がある。この技術革新期において単なる規模の競争から大きな事業価値は生まれない。妄想力を元に様々な技術を使いつつ領域を刷新できる人がカギになる。技術×夢×デザインだからだ。

 そのような人を育てるためにも、マシンのほうが得意な能力である「知識をスポンジのように吸収させる力」を育てる従来型の教育を、止め、ものごとを「感じる」「見立て」「決める」力、その素地となる深い知覚を磨く教育にスイッチすべきだ。その土台として、まずは日本語、さらには“世界語”である英語を使って、明確に考え、伝え、議論する能力が求められる。

 また、理系・文系を問わず、少なくとも大卒レベルの8割以上、できれば全学生に、データ×AIリテラシーを武器として身につけて頂く。その1割を、ドメイン知識を持つ専門家として、そのさらにトップ1割は、未来を切り開くリーダー層として育成していく。

 残念なことに、日本の高等教育・科学技術予算は、米中に比べて相当に貧弱だ。深層学習に関する論文数も、中国とアメリカが群を抜いて2強となっている。日本は博士号を取得するのに、借金をする必要があるまれな国だ。情報科学系の国研の予算も削られている。「日本では生きていけない」という理由で、科学技術系のトップ大学院生やスタートアップの若き逸材の国外脱出が顕在化している。

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