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安倍晋三論【後編】「ふわっとした民意」をつかむ“感動政治”|プチ鹿島

7年8カ月超という憲政史上最長の在任期間を終えた安倍晋三前首相。「桜を見る会」前夜祭を巡る問題で、東京地検特捜部は安倍氏の公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。一方、安倍氏本人は不起訴処分となった。12月24日に急遽開いた記者会見では、事実と異なる過去の国会答弁を謝罪しつつ、自身の関与は繰り返し否定。25日には衆参両院の議院運営委員会に出席し、国会答弁を訂正のうえ陳謝した。まだまだ過去の人にはなりえない「安倍晋三」という政治家について、時事芸人のプチ鹿島さんがあらためて考察する。前編から続く)

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 安倍晋三の政治を「感動政治」と定義することはできないだろうか。

 ここでいう感動とは感激の政治利用もあるが、人々の感情を動かすという意味もある。権力を持つ人や政治家が人々の感情を動かして自分の得にする手法に注目したいのだ。なかでもSNSは有効な道具だ。

 再登板は難しいという空気の中、2012年秋に自民党総裁選で勝利した安倍晋三。奇跡の復活の理由として私が注目したのが「ネットで元気だった安倍さん」である。マスコミ批判などが大いにウケていてネットでは存在感を保っていた。

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2018年の「桜を見る会」での安倍晋三氏 ©︎文藝春秋

 安倍がツイッターより身内的な雰囲気が漂うフェイスブックを重用していたのは興味深い。のちの第二次政権であらわになるモリカケ桜は公私の曖昧さ(というか公私混同)が大事なポイントだったからだ。昭恵夫人もフェイスブックを好んで使っていた。

「対マスコミ戦略」の手法

 ではまず安倍晋三論として重要な「対マスコミ戦略」の手法について見ていこう。

 ドナルド・トランプがアメリカの大統領選に勝利した2016年秋。各国首脳は予測不能の新大統領に対し出方をうかがっていたが安倍はすぐに動いた。そして意気投合したと伝えられた。産経新聞によると、2016年11月のニューヨークのトランプタワーでの初会談で軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出したという。

「実はあなたと私には共通点がある」

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