見出し画像

同級生交歓 埼玉県立川越高等学校 昭和50年卒

人の一生を左右するのは校風か、学歴か、友人か。意外な組み合わせ、納得の顔ぶれが並ぶ“誌上同窓会”。「文藝春秋」の名物グラビア企画です。

【見開き】

東京都江東区 若洲ヨット訓練所にて(撮影・山元茂樹)

(右から)
ノンフィクション作家
本橋信宏
越生町議会副議長
水沢努
キャスター・大阪綜合研究所代表
辛坊治郎

17の春。

1時限目の授業をさぼり、川越の街を歩き、仰ぎ見た空は青かった。自由! 組織に入らずフリーの道を歩もうと誓った。

同クラスの水沢努は陸上部で活躍、原付バイクに乗って日本一周を果たした。

辛坊治郎は入間市出身、クラスで1、2位を争うはにかみやの秀才だった。

母校、埼玉県立川越高校は学区内の生徒会長が全員集合したかのような男子高だった。2級下にノーベル物理学賞の梶田隆章日本学術会議会長が在籍、映画『ウォーターボーイズ』発祥の高校でもある。

赤ヘルをかぶった水沢は高校三年の晩秋、フォード大統領来日阻止闘争で逮捕されるが釈放後、立教・経済に受かった。私も同時期、交通事故で1ヶ月入院するが、早稲田・政経に受かった。共にしぶとい。

水沢はセクトの幹部として三里塚武装闘争を牽引、懲役4年6ヶ月をうたれ下獄。その後組織を率いるも、現在は過去を猛省し、議会制民主主義の可能性にかけ郷土のため、越生町議会副議長をつとめている。

東大を狙っていた辛坊は一浪後早稲田・法に進学、まさかTVキャスターになるとはまわりはもちろん本人も思わなかった。

太平洋横断に失敗し、命を失いかけ、2度目の挑戦は無謀と言われたが、昨年、太平洋往復に成功した。今、辛坊は成功に浮かれず、テレビ画面からは想像もつかない虚無感を嚙みしめている。

私の執筆テーマは、著名人の集合写真で“一人おいて”と書かれてしまう“おかれてしまった”人生であり、忘れ去られた英雄の物語である。ある男を描いた拙著が『全裸監督』というタイトルのドラマになってNetflixから世界に配信され、大ヒットとなった。還暦過ぎの僥倖である。

「新木場まで歩こう!」。普段は着物姿に雪駄履きの辛坊の一言で、60分近くかかる帰り道を浜風に吹かれ歩く。空はあのときと同じ青さだ。(本橋)

続きをみるには

残り 0字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください