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人口減少社会でも豊かに暮らす「戦略的に縮む」選択

文・河合雅司(ジャーナリスト)

 日本の人口は急速に減少していく。しかも、4半世紀後には国民の約4割が高齢者という歪な年齢構成の社会を迎える。

 人口が減れば、当然ながらマーケットは縮む。高齢化は独居世帯の増加を招き、1人当たりの消費量も減らす。一方で働き手も減っていく。

 こうした厳しい状況下で、我が国は経済成長を果たせるのだろうか?

 結論から述べるならば、短期的には十分可能だ。しかし、長期的には縮小の道を歩むこととなるだろう。

 経済成長は人口規模だけで決まるわけではない。高度経済成長期は人口の伸びよりも、イノベーション(技術革新)などによる押し上げ効果のほうが大きかった。「人口減少=マイナス成長」とは限らないということだ。

 経済的豊かさを表す指標の1つであるGDP(国内総生産)は、労働者の総数と1人あたりの年間生産量によって決まる。1人当たりの生産性の向上が、働き手が減ることによるマイナス効果を凌駕すれば経済は成長することとなる。

 近年、イノベーションは目覚ましい。それ以外にも、高齢者や女性などの就労拡大や、海外の優秀な人材や資本の呼び込みなど生産性にプラスに作用する要素はある。

 しかしながら、こうしたやり方で人口減少によるマイナス分を全部賄い切れるのかといえば、そうともいかない。

 2040年代になると人口は毎年90万人のペースで減る。今後は80代以上の「高齢化した高齢者」が激増するなど、日本の変貌ぶりは極めて大きい。長期的に捉えるならば、どこかで日本経済は縮小に転じると考えるのが自然だ。

 これに対して、外国人や人工知能(AI)が解決するという楽観論もあるが、そう簡単にはいかない。

 外国人労働者の大規模受け入れによって現状の生産態勢やサービス提供態勢を維持できても、消費者の減少に歯止めを掛けられるわけではない。やがて過剰供給に陥るだけだ。AIは業務の省力化には有効だが、子供を産むわけではなく根本解決にはつながらない。

 他方、海外マーケットの拡大を図るという選択肢もある。しかし、全部の業種や企業が海外に市場を求められるわけではない。これまで多くの日本企業は良質な国内マーケットで利益を上げてきた。国民の暮らしを豊かにすることを社会的使命としてきた企業が少なくないということだ。国内マーケットが縮むからといって、すべてを海外に切り替えるというわけにはいかないだろう。

 人口減少に伴う経済縮小を根本解決しようとすれば、子供がたくさん生まれる社会を取り戻すしかない。だが、それが実現するにしても遥か遠い将来だ。

 現実的には経済が縮み始めることを前提として、日本の豊かさをどう維持し得るかを考えなければならない。

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