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【連載】EXILEになれなくて #6|小林直己

第二幕 EXILEという夢の作り方

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一場 EXILEの人気の秘密、僕の体、脊柱管狭窄症

 EXILEという夢。それは白昼夢や幻の話ではなく、もてはやされ、囃し立てられることでもなく、もっと具体的な方法論のことである。 このピースを動かせば、あのピースがずれる。そういったものを調整し、自らが歩むべき道、目の前の道を整えていくためのもの。社会と関わり、厳しい環境の中で生き残っていくための、サバイバル術である。 

 夢は、決して一つではない。 そもそも、夢が見つからない、また、持てないこともあるだろう。その期間は、夢を育むための土壌を耕している最中であり、肥沃な大地を自らの内に育てていると考えてほしい。それほど豊かな、麗しい時間は他にはないのだから、十分に味わってほしい。 その先に、もし、夢が生まれたら。夢を持つことで、人は自らを再発見する。夢に近づこうとすることで、一つの道が切り開かれる。夢が叶ったり、また、惜しくも叶わなかったりするが、そこには新たな夢が、また生まれたりする。 人生は、一方通行で、まっすぐに進んでいく。それぞれ異なるスピードで、それぞれが道の途中に駅を置き、目標地点にしたり、休憩したり、とペースを作って進んでいく。夢とは、その一つ一つの駅、つまり点なのである。その点と点をつなぎ、線にしていくのが人生であるとするならば、その線を他人の線と交錯させ、立体にしていくことが、 僕にとっての EXILEだった。 

 夢が叶ったり、叶わなかったりすることだけが問題ではない。点と点の間には、その人自身が悩み苦しみ、もがいた経過が記されている。 本人にはとても辛いことかもしれないが、それは、周りの人を何よりも励まし、支え、共感を生んでいく。 EXILEは、その過程を惜しみなくさらけ出してきた。その筆頭であるHIROの人生観と経験が、人を引き寄せ、EXILEを生み出した。そして、そのグループに引き寄せられ、また新たな世代が集まってきた。「Love, Dream, Happiness」 に込められた思いにシンパシーを感じた僕たちは、どこかに共通点を持っており、各自がそれを明確にし、掛け合わせることによって、一人では生み出すことのできない、シナジーを発生させていく。その過程に魅力がある。 ある人に、「EXILEはドキュメンタリー商法だ」と揶揄されたことがあったが、もしかしたらある意味、それは正しいのかもしれない。大切なのは、そこに人を動かす力があるかどうかだ。本人が、あまり好ましくないと思っている部分をさらけ出したとしても、一生懸命取り組んでいれば、救われる人はきっといる。そう信じて活動しているし、僕は、そうして救われた。 

***

 EXILEに加入する前に観た、ある番組。その日は、EXILE特集をやっていた。パフォーマンスが気になる僕は、テレビの前に待機した。放送された内容は、これまでの6年間の歩みを辿るというもの。そこで、一人のメンバーへの言及があった。 

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