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タイ、韓国も解禁 日本で医療大麻が認められる日はくるか

文・佐久間裕美子(文筆家)

 いま、アメリカではマリファナ合法化の波が全国的に広がりつつある。1996年にカリフォルニア州が初めて合法化したマリファナの医療使用はいまや33州で実現され、コロラド州で2014年から始まった嗜好用をも含む完全合法化は、2020年から施行が決まったイリノイ州を含めると11州にまで増えている。マリファナを違法物質に指定している連邦議会もついに重い腰をあげ、1970年にニクソン大統領の下で制定された「規制薬物法」が定める薬物リストを見直し、マリファナをもっとも危険な「スケジュール1」という分類から外すのか、はたまたその扱いを「非犯罪化」するのかを活発に議論し始めている。

 このアメリカで起きたパラダイム・シフトは一朝一夕でなされたものではない。長い闘いの末に民意が勝ち取った結果だった。アメリカでマリファナは「人種差別問題」であり、大統領選でも候補者はマリファナ合法化の是非を必ず問われてきた。医療のコストが右肩上がりに高騰するなか、多くの疾患に効能を持つ植物としての側面も喧伝されてきた。そうした歴史的な変遷、さらに完全合法化を皮切りに起きた一種のマリファナ・バブルについては拙著『真面目にマリファナの話をしよう』をお読みいただくとして、合法化の波を最後に後押ししたのは、2008年のリーマン・ショックに端を発した財政難だった。

 実際に合法化が実現すると、規制下での販売を認めることで税収が確保されただけでなく、激増する薬物犯罪の取締りにかかる費用も削減でき、また闇市場を排除し、未成年によるアクセスを防げるなど、経済的・社会的メリットも大きいことが明らかになった。また、アメリカに蔓延する深刻なオピオイド中毒を救う薬としても認知されつつある。

 すべての薬物を世界に先んじて2001年に非刑罰化したのはポルトガルだった。それは国内で深刻だった薬物(特にヘロイン)の依存症患者を処罰するのではなく、治療の対象にして社会復帰させるという試みとしての特殊ケースだったが、その後オーストラリア、ドイツ、イタリアなどの30ヶ国以上でマリファナの医療使用が取り入れられ、2013年にウルグアイが、2018年にカナダが嗜好用も含めた完全合法化に踏み切っている。伝統的にマリファナに厳しかったアジアでさえ、タイが医療使用を合法化し、韓国もそれに続いている。グアムでは2019年4月に合法化法案が可決され、施行に向け準備が進められている。

 さらには、メキシコ人は治安を悪化させるということで、排斥の意図で1920年代から使われだした「マリファナ」という呼称が人種差別的であるとして、いまでは全世界的に「カンナビス」という植物名が使われるようにもなった。

 最近では輸出品としての側面も注目されており、カンナビスの栽培・輸出を検討する国も増えている。栽培は気候的な条件が合わなければ大変難しいものの、ウガンダ、ジンバブエ、コロンビア、マレーシアなどが輸出品として栽培することを検討しているという。

 そして2018年にWHO(世界保健機関)が医療効果の元となる成分CBD(カンナビジオール)について、依存性が認められないこと、抗てんかん作用、神経防護作用、抗炎症作用などの効能があると見解を示したのは大きな事件だった。カンナビスは700以上もの種類があるため、その効能の全容を解明するには長い時間がかかるが、多発性硬化症やてんかん、緑内障に効果があるだけでなく、抗がん剤の副作用を緩和したり、アルツハイマー病の進行を遅らせるなど、数々の研究結果が発表されていることもあり、WHOは2020年にあらためて議論・見解を発表する見通しとなっている。

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