詩――野木京子【全文公開】

汽水域

母の舟が時の川霧を押し分けて現れた
空ろな刳り舟のようだったが まっすぐ流れてきたので
その日から 私は死んだ母の舟に乗って生きている
――無理に生きようとしなくても
  舟に乗って進むだけの日を過ごしてもかまわない
泳ぎの得意な人だったので 物語の海も達者に泳いでいた
汽水域から遠く見える 恐ろしい地点であるはずの
果てが崖となって激しく落下する海域を
いまは解き放たれたのか
自在に泳いでいる小さな姿も見えた



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