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菅首相が党幹部職員に密命を……「4月解散・5月選挙説」急浮上の舞台裏

総理周辺が煽る春の嵐。その真意やいかに?/文・赤坂太郎

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自前の派閥を持たない菅にとって、世論調査は命だ。支持率が下がると無派閥という最大の弱点が露呈する
▶︎「4月に解散しても大丈夫なように準備を進めておいてくれ」。菅は3月中旬、深い信頼を寄せる自民党本部の幹部職員にこう密命を下した
▶︎外は終息が見通せないコロナ禍、内では二階と麻生の対立など主導権争い、そして安倍との微妙な関係で政権基盤が揺らぐ

支持率上昇に拍手してはしゃぐ最高指導者

緊急事態宣言の解除により、新型コロナがまたぞろ静かに蔓延してきた。その感染者数と菅義偉内閣の支持率は逆相関を示す。感染者が減れば支持率は上がり、逆もまた真なり。菅は4月からのワクチン接種と夏の東京五輪開催で反転攻勢を狙うが、あまねくワクチンが行き渡る時期は見通せず、世論の大勢はスポーツの祭典を歓迎していない。このまま秋を迎えれば、解散権を行使する前に「菅降ろし」の風が吹きかねないと、政府・自民党の一部からは春の嵐の如く「4月解散・5月選挙」の風説が流布され始めた。

「ほらみろ! こんな難しい時期に俺以外の誰も総理大臣を務められないということにみんながようやく気付いたんだ」

歴代首相の中でも菅の朝は特に早い。3月8日、いつものように午前7時に官邸に入ると、いつになく上機嫌だった。執務室に入るや否や、こう言い放った。しかも、自らパチパチと拍手しながら……。

目の前のテーブルに広げられていたのは、内閣支持率が2月に比べて9ポイントも上昇した世論調査の結果を1面で報じる読売新聞だった。菅はこの調査結果を前夜、内々に伝えられていたため、この日は東京・赤坂の議員宿舎を出る時から上気していたのだ。自ら拍手をしてはしゃぐ最高指導者の姿に秘書官たちは複雑な表情を浮かべたが、上機嫌の菅はその空気など察することはなかった。

自前の派閥を持たない菅にとって、世論調査は命だ。自民党史上、初の無派閥出身の首相である菅は、支持率が下がると無派閥という最大の弱点が露呈する。議員秘書から宰相の座に上り詰めたものの、その途端に「首相としての資質」に疑問符を付けられたという点で菅と酷似しているのが元首相の森喜朗だ。しかし森には大派閥「清和会」という支えがあった。森の留守を預かった小泉純一郎はどんなに支持率が下がっても森を支え、「加藤の乱」など倒閣の動きの鎮圧に奔走した。

だが、菅にはそうした後ろ盾はない。支持率が下がり「菅では選挙は戦えない」となれば、あっという間に「菅降ろし」が党内に広がることは必定だ。菅は首相就任前、気を許した政界関係者に「私には安倍さんと違って国家観というものがない。地方議員上がりですから」と自嘲気味に語っていた。信念も定見もない菅にとっては、内閣支持率が全て。それゆえ、昨年末からの支持率の急落にイライラを募らせ、厚労相の田村憲久ら閣僚や官邸スタッフに当たり散らしていた。だが、この世論調査を機に顔色もよくなり、国会答弁や記者会見での受け答えにも落ち着きが見られるようになった。

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菅首相

菅の密命と高いハードル

「独り拍手」から4日後、菅のテンションはさらに上がる。バイデン米政権が4月前半に菅をワシントンに迎えて首脳会談を行うと発表したのだ。

「バイデン大統領が直接会談する最初の外国首脳としてお迎えいただく。この機会を生かし、日米同盟のさらなる強化につなげていく」。菅は3月12日の政府・与党連絡会議で、自分が一番乗りとなったことをことさら強調してみせた。実は、菅はワシントンのポトマック河畔でバイデンと一緒に桜を観るパフォーマンスを行えないかと外務省に指示してもいる。

米国が最初の首脳会談の相手に菅を選んだのは、バイデン政権のアジア外交を取り仕切るのがホワイトハウスで「インド太平洋調整官」を務める知日派のカート・キャンベルであり、外務省がそこに強く働きかけた結果だ。菅は「外務省はよくやった」と事務次官の秋葉剛男らを労った。

だが、米国通の専門家は、バイデンにとって同盟国との絆を再確認し、共に中国に対峙することを宣言し「大統領の強い指導力」を国民に印象付けることができる会談相手がこの時期、日本だけだったのが実態だと指摘する。要は米国側の都合でたまたまそうなっただけなのだ。

ところが、菅はすっかり舞い上がり、本気で早期の衆院解散を検討し始めた——との情報が自民党中枢から漏れ始めた。実際、その証左は存在する。

「4月に解散しても大丈夫なように準備を進めておいてくれ」。菅は3月中旬、深い信頼を寄せる自民党本部の幹部職員にこう密命を下した。この幹部は「難しいのでは……」と返答したが、菅は「どうせ10月までに選挙はやらないといかんのだ。首相がやれと言えばやれるだろう」と準備だけは進めておくよう畳みかけたという。幹部職員が尻込みしたのは、高齢者へのワクチン接種が4月中旬から本格化するため、自治体が選挙事務と接種の両立で悲鳴を上げることが確実であるばかりか、集団接種会場に想定している体育館などの施設が衆院選の投開票の会場と重なる事態が予想されるからだ。

創価学会は絶対反対

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