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藤崎彩織 ねじねじ録|#5 T字の正体

デビュー小説『ふたご』が直木賞候補となり、その文筆活動にも注目が集まる「SEKAI NO OWARI」Saoriこと藤崎彩織さん。日常の様々な出来事やバンドメンバーとの交流、そして今の社会に対して思うことなどを綴ります。

Photo by Takuya Nagamine
■藤崎彩織
1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た4人組バンド「SEKAI NO OWARI」ではSaoriとしてピアノ演奏を担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。初小説『ふたご』が直木賞の候補になるなど、その文筆活動にも注目が集まっている。他の著書に『読書間奏文』がある。

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T字の正体

「すぐに第二子を考えていないなら、IUSを着けてみますか?」
 そんな事を婦人科医に聞かれたのは、産後2ヶ月経って生理が再開した頃。丁度全国ツアーのリハーサルが始まり、母乳をあげられないので完全ミルク育児に切り替えたタイミングでもあった。
「IUSって何ですか?」
 最近アルファベットの頭文字を取った略称をよく聞くので、何かとごっちゃになりそうだなと思っていたら、婦人科医はそれが避妊リングと呼ばれるもので、子宮内に装着するタイプの避妊器具であることを教えてくれた。
 リングというと輪っかを想像するけれど、見せて貰った物はグーの中に収まる位小さなT字をしていて、そこから短い糸が垂れていた。
「これを着けると、どうなるんですか?」
「避妊に関しては、着けているだけでピルと同じような効果がありますね。生理痛も緩和するし、経血もかなり減る。人によっては生理が全くこなくなりますよ」
「えっ、生理がこなくても大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。それに、妊娠したくなったら病院に来て貰えたら外せます。生理はすぐに戻りますよ」
「どの位の期間着けていて良いものなんですか?」
「いつ外しても良いですけど、最大5年です」

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