
【42-経済】コロナで肥大したGAFAに法規制が必要なこれだけの理由|スコット・ギャロウェイ
文・スコット・ギャロウェイ(ニューヨーク大学スターン経営大学院教授)
分断を助長するアルゴリズム
新型コロナウイルスによるパンデミックは、今もアメリカに重くのしかかったままです。累計で感染者は980万人に達し、死者も23万人を超えました。
経済面でのダメージも甚大です。すでに労働者の4人に1人が失業保険を申請していますが、さらに失業者が増えるでしょう。経営難に陥った航空会社に対して、米政府は雇用維持のため250億ドル(約2兆6000億円)規模の支援を行いましたが、アメリカン航空、ユナイテッド航空の大手2社だけで、3万人もの解雇を予定しているからです。
このような最悪の状況下で、ますます勢いを増している企業もあります。
Google、Apple、Facebook、Amazonといったビッグテック企業、いわゆる「GAFA」です。彼らは莫大な資金を保有しているので、他の企業が守勢に回らなければならない状況でも、積極的に投資や買収を行っています。
コロナ禍で最も利益を上げたのは、アマゾンでしょう。人々は今までスーパーで購入していた食料品、日用品をオンラインで買うようになりました。野菜などの生鮮食料品を配達してくれるアマゾン・フレッシュは、2020年3月の時点で前年同月比323%もの注文数アップを記録しました。
アマゾンは通販サービスだけに留まりません。リモートワークを導入する会社が増えたので、クラウドサービスを経由するデータ量が増大しました。これはクラウドソリューションを提供するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の売上増につながりました。
ストリーミングサービス、食料品の宅配、サプライチェーンと、どんな業態であろうと、アマゾンほど売上高を増やしている企業は他にありません。GAFAの中でも頭ひとつ抜きん出ています。おそらくアマゾンは2021年末までに、時価総額が2兆ドルを超える企業になるでしょう。
このように、GAFAが提供するサービスは、もはや電気、ガス、水道などと同じく、私たちの生活に欠かせないユーティリティとなり、彼らは人類史上最も儲けている企業になりました。
と同時に、コロナ禍とそれに続く「Black Lives Matter」運動で、GAFAの持つ負の側面が露呈しました。彼らが神のように崇めるアルゴリズムは、意図的に歪曲された情報を垂れ流し、人々の怒りを増幅し、分断を助長しています。
2020年5月、警官に首を圧迫されて殺されたジョージ・フロイド事件のときの、フェイスブックCEOのザッカーバーグの態度を思い出してください。トランプ大統領が「略奪が始まれば銃撃も始まる」と、抗議者への発砲を容認するような投稿をしたのに、なんの対応も取りませんでした。
彼がようやく重い腰を上げたのは、投稿への批判が高まり、広告掲載を取りやめる企業が出てきてからです。そこで初めて、「有害な可能性のある投稿にはラベル表示する」と方針を転換したのです。
グーグルとアップルは新型コロナ感染者との接触を検知して通知する、流行拡大を防ぐためのシステムを開発しました。今後はこれを活用することで、オフィスに出入りしたり、飛行機に乗ったりすることができるでしょう。