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高市早苗「女性天皇には反対しない」聞き手・石井妙子
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高市早苗「女性天皇には反対しない」聞き手・石井妙子

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今、最も注目される女性議員に皇室観を問う。/文・石井妙子(ノンフィクション作家)

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高市氏(左)と石井氏(右)

皇統の維持をどう考えていくのか

秋篠宮家のご長女・眞子さんの結婚と渡米という出来事があり、12月には天皇家のご長女・愛子さまが20歳の誕生日を迎え、成年皇族となられた。今、皇室への、とりわけ皇統への関心が、国民の間で非常に高まっていると感じる。

現行の皇室典範では「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と規定されており、愛子さまに皇位を継承する資格は与えられていない。これまで幾度か、「皇室典範を改正し、女性天皇、女系天皇を認めるべきだ」といった議論が交わされてきたものの、今に至るまで改正されることはなかった。

皇位継承順位の第1位は秋篠宮さま、第2位はそのご長男である15歳の悠仁さまである。だが、国民の間には、天皇の長子である愛子さまが天皇になることを望む、「女帝待望論」の声も聞かれる。また、将来、悠仁さまがご結婚なさり男子が生まれなければ皇位継承者が誰もいなくなることを懸念する声もある。

今後、皇統の維持をどう考えていくのか。9月の自民党総裁選では、4名の候補者のうち岸田文雄氏と高市早苗氏の2名が「皇位は男系男子で維持されるべきであり、旧宮家の皇籍復帰を支持する」と述べた。今回、高市氏に改めて真意を尋ねた。

――2004年、小泉純一郎内閣において「皇室典範に関する有識者会議」が設置されました。その際には「女性、女系天皇を認める。皇位継承は長子優先」とする報告書が提出され、それを受ける形で国会でも審議が始まろうとしていた。当時も、高市さんは「男系男子の伝統を守るべき」と予算委員会で主張しました。男系男子に一貫してこだわってきた理由を改めて教えてください。

高市 令和22年には皇紀で数えると2700年を迎えます。それだけ長い歴史のなかで大変な努力をしながら、初代神武天皇から繋がる血統、つまり、男系男子という万世一系の皇統を守り続けてこられたわけです。私は、126代も続いた皇統が、天皇陛下の権威と正統性の源だと考えています。

世界の王室にも比類がありません。歴史上の皇室や王室の中で現存し、かつ世界最長の歴史をもつご皇室であり、皇統が維持されているからこそ、日本人は天皇陛下を別格の存在として尊敬し、誇りに思ってきました。日本人が先祖代々奉じてきた皇統を絶やして、ひとたび女系に変えてしまうと、元には戻せなくなってしまいます。

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天皇陛下
(宮内庁提供)

一度の例外もなく男系

――男系とは父が天皇、もしくは父親の父親の父親の、と父方だけをたどっていくと天皇に行き当たるということですね。それに対して天皇の娘の子孫は父方が天皇ではない、つまり女系である、と。

高市 仮に、愛子さまが天皇に即位されたら、男系(父が天皇)の女性天皇になられる。その後、仮に愛子さまがAさんという民間の男性と結婚され、第1子に女子が誕生して天皇に即位されると、「女系(母親もしくは母方の先祖が天皇)の女性天皇」となられます。この天皇の男系の祖先はA家、女系の祖先は小和田家(雅子さまの父親の姓)ということになります。最初は男系の女性天皇、次に女系の女性天皇とすると、2代で男系の祖先も女系の祖先も民間人ということになってしまいます。

父方の血統が、初代天皇から繋がっているのが皇統です。2600年以上の長きにわたり、1度の例外もなく男系でした。男性の天皇であっても女性の天皇であっても、南北朝時代にあっても、父親をたどれば必ず歴代の天皇に連なるという継承を維持してきた。今の時代に変えてしまったら、やり直しはききません。

――天皇の子孫であることが重要で男性でも女性でも同等に尊いとは考えられないのでしょうか。

高市 私は女性天皇に反対しているわけではありません。女系天皇に反対しています。女性天皇は過去にも推古天皇をはじめ八方(人)いらっしゃいましたが、すべて男系の女性天皇(天皇が父)です。在位中にはご結婚もなさらず、次の男系男子に皇位を譲られた歴史があります。男系による皇位の継承は、大変な工夫と努力を重ねて連綿と続けられてきたものであり、その歴史と伝統に日本人は畏敬の念を抱いてきました。

側室制度は認められない

――男系男子こそが日本の皇統の歴史だ、というご意見ですが、歴代天皇の約半数が側室を母に持つ庶系(正妻の子どもではない。庶子)の天皇です。大正天皇も明治天皇も孝明天皇も仁孝天皇も皆、側室の産んだ男子です。天皇ひとりに多くの側室がいた。男系男子は側室制度がなければ維持できないという意見があります。戦後になって皇室典範が改正され庶子は皇位につけなくなりました。男系男子の伝統を守るには、側室制度という伝統も復活させなければ無理なのではないでしょうか。

高市 側室制度の復活などは、考えたこともございません(笑)。

――その理由は?

高市 理由もなにも。明治31年の『民法』で重婚が禁止され、一夫一婦制になりました。『戸籍法』でも「妾」が削除されました。ご皇室でも、昭和天皇以降は側室制度が廃止されています。今からご皇室だけが側室制度を導入するということになると、国民の皆様の敬愛の情というものが薄れていく気がしますね。昔はそれで良かったのかもしれませんが、側室制度について、今の日本の法律で認められるかといったら、そうじゃない。そこは大正時代までの価値観と変化したところです。

――価値観の変化に合わせて制度を変えるということならば、女性が帝位を継いでもいいのではないか、という議論も成り立つのではないでしょうか。戦前と違って今は女性も高等教育を受けられるようになり、男女差別をしてはいけないという認識が広がっていますが。

高市 私は、女性天皇には反対をしていません。女系天皇に反対しているのです。「女系に移った場合、海外では王朝の交代とみなされる」という指摘もあり、世界と広く関わる時代にあって、2600年以上の伝統を持つ国家元首がおられることの価値は誇るべきものであり、私は、大切にしたいと思います。

また、よく「男女平等だから」といった価値観で議論をなさる方がいらっしゃいますが、私は別の問題だと思っています。男系の祖先も女系の祖先も民間人ですという方が天皇に即位されたら、「ご皇室不要論」に繋がるのではないかと危惧しています。「じゃあ、なぜご皇族が特別なの?」という意見も出てきてしまうかもしれません。そういう恐れを私はとても強く持っています。

肉体的にも精神的にも大変

――皇室への思いが強まったのは政治家になってからですか?

高市 いいえ、子どもの頃からだと思います。天皇陛下は特別な方だと思っていました。

――奈良県の出身ということも、関係していますか。

高市 あるかもしれません。子どものころから橿原神宮には毎年お参りをしていましたし、天皇陛下の勅使が毎年、橿原神宮にお出ましになるのも見ていましたから。

――国民の間では女性に天皇になって欲しいという「待望論」が強まっているように感じますが。

高市 国民の皆様の間で待望論が強まっていますか? 私は承知していません。どんなアンケートでしょうか。内閣府が行ったものですか。

――いえ、新聞社や雑誌社、テレビ局が行ったものです。一例ですが、NHKが2019年9月に行った世論調査では女性天皇に賛成する人が74パーセント。特に18歳から29歳までの若い世代では90パーセントが賛成でした。また、女系天皇にも全世代において71パーセントの方が賛成、という結果でした。

高市 その調査については、私は承知しておりませんが、どうなのでしょうか。今を生きる私たちの世代で、連綿と守り続けてこられた世界に例を見ない貴重な皇統を絶やすことを安易に考えるべきではないと思います。

私は、女性天皇に反対する立場ではありませんが、現実的には女性が皇位を継がれることは、大変だろうと想像しています。多くの国事行為、外国賓客への対応、宮中祭祀……。皇位に就かれた女性天皇が激務をこなしながら、ご懐妊やご出産をされるのは、肉体的にも精神的にも大変なことだと思います。

――政治の世界でも「女性には無理だ」といわれることが多いのではないでしょうか。そうした中で風穴を開けてきたひとりが、高市さんだと思うのですが。

高市 私は今の仕事でも相当、体力的にはきつい所を、歯を食いしばってやっています。これまでの仕事もそうでした。やはり「男性のほうが体力があるなあ」と思うことが、たびたびありました。私が総務大臣をしていた時のことですが、当時の安倍総理と一緒に被災地に行ったことがあります。総務大臣は、消防や地方財政も所管していますから。瓦礫の中を長時間歩きましたが、その時、「男の人はやはり体力があるな、強いな」と思ったものです。

天皇陛下のご公務を何度か神事を含めてお側で拝見させて頂いたことがあるのですが、「ああ、これは大変だ」と、つくづく思いました。立ったり座ったり、あの重い装束でなさる。寒い中をずっと宮中の三殿を歩かれて長時間、務めておられるのを拝見したこともあります。垣間見る陛下のご公務のありようだけでも、私では無理だと、それほどの激務だと感じました。女性でも、できなくはないのかもしれませんが、相当お辛いことだと拝察致しました。

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被災者の話に耳を傾ける上皇陛下(当時は天皇)

総理の忙しさは想像がつく

――総理大臣も大変に多忙で、超人的な体力が必要なのでは? でも、高市さんは総裁選に臨みました。

高市 確かに総理にも超人的な体力は必要だと思いますけれども、それはだいたい想像がつくんですよ。総理には悪いけれども(笑)。閣僚は、衆参両院で委員会をいくつも掛け持ちして、朝から夕方まで答弁を続け、夜間や早朝や昼休みに役所の仕事をこなしますが、総理は予算委員会の代表質問が終わったら、その後は一般質疑で出席不要ですから、官邸で仕事をする時間は確保できます。確かに閣僚よりは重責で激務ではありますけれども、どの程度の激務なのか、自分に堪えられるのかどうかは、だいたい想像がつきます。

――上皇さまの生前退位が決まる過程で秋篠宮さまは、「兄が80歳の時、私は70代半ば、それからでは(即位)できないです」とおっしゃったと報じられ、天皇即位を辞退するご発言かと物議を醸しました。皇位継承順位第1位の秋篠宮さまが即位を辞退したいとお考えになった場合、それは認められると考えますか。

高市 それは難しいでしょうね。法律も変えて、皇嗣職を作ったという中で皇位継承の筆頭にある方が、お継ぎにならないということは、とても難しいと思います。

――皇位継承者の男性皇族が「皇室から離脱したい」という意志を表明する、という心配をしたことはありますか?

高市 無いです。大変な責任感と矜恃を持っておられると思います。

――将来、悠仁さまに男子のお子様が誕生しなければ現状の皇室典範では皇統は維持できません。悠仁さまに嫁がれる方には男子を生まなくてはならないという強い重圧がかかる。雅子さまにも相当な重圧がかかった。男子をお生みにならなかったことで責められた部分もあり、それもご体調を崩された一因であったように思えるのですが。

高市 国民の皆様は雅子さまを責めたでしょうか? 宮中では、私たちには想像もつかないぐらい大変なことが沢山あると思います。そうした中で、やはり精神的に相当お疲れになられたのだと思います。

男のお子さまを産まなかったからという理由で国民の皆様が雅子さまを責めたというような事実はなかったと思います。今は皇后陛下として、本当に堂々と凜とされていて「ご立派だなあ」と尊敬申し上げる存在ですよね。

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雅子さまに抱かれる愛子さま
(宮内庁提供)

紀子さまご懐妊の一報

2005年11月、小泉政権下の有識者会議による「女性も天皇になれる、女性皇族と民間男性との間に生まれた子どもは皇位を継承できる」といった内容の報告書を受けて、皇室典範改正に向けた審議が進められようとしていたが、国会会期中の翌年2月、39歳だった紀子さまのご懐妊が伝えられ、9月には悠仁さまが誕生。皇室典範改正の議論は白紙に戻された。

後に民主党の野田佳彦内閣において、女性皇族が結婚後も皇族として残る「女性宮家」の設立が検討されたが、野田政権の終了とともにこれも白紙に戻された。

――紀子さまご懐妊のニュースが入った時は驚かれましたか?

高市 「嬉しいなあ」と思いました。ご懐妊という明るいニュースで、とてもワクワクしましたよね。「お元気で生まれてきていただきたい」と願いました。

――安倍政権では男系男子での皇位継承が強く支持され、女性天皇、女系天皇、女性宮家について議論されませんでした。女性宮家の設立にも高市さんは反対ですか?

高市 女性皇族が結婚後、ご希望なさったなら、ご本人のみ元皇族として特別なご公務に就かれるというような形があればいいと思います。ですが、女性宮家ということになると、様々な問題が出てくると思います。宮家を維持していくのは大変なことですから。それに対する国民の皆様の理解といったことも考えなければならなくなります。

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紀子さまに抱かれる悠仁さま
(宮内庁提供)

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