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【59-社会】リモートはうつに効く「職場の三密」からついに解放された私たち|池内龍太郎

文・池内龍太郎(産業医・労働衛生コンサルタント)

メンタルへルス問題の背後に「職場の三密問題」

新型コロナウイルス感染症流行対策の一環として、日本社会はついにリモートワーク体制に舵を切りました。職場のメンタルへルスを預かる産業医(精神科医でもあります)として、これは画期的な変化だと感じます。

なぜなら、我々産業医が日々直面しているメンタルへルス問題、その背後に横たわっている最大の課題は、いわば「職場の三密問題」だったからです。

1、 緊密な人間関係

2、 上司や同僚との物理的な距離の近さ

3、 過密なスケジュール

ここに「通勤地獄」を加えれば「四密」ともいうべき状況。時にはうつ病さえ誘発してしまう、このような厳しい労働環境に、長く日本の働き手はおかれていたのです。

「安心感」が社員を活かす

あなたが上司や先輩にあたる立場ならば、部下に対しては常に、期待と同時にもどかしさを抱いておられることでしょう。互いのデスクがひしめき合う「三密」なオフィス環境では、そうした想い、さらには同僚に対する不平不満・嫉妬のような負の感情まで、良くもわるくも当人にダイレクトに伝わり、無言の圧力となって、心理的ストレス要因として作用してきました。その鎖から働き手を解き放つきっかけになったものこそ、コロナ禍におけるリモートワークだったのです。

大企業がさきがけとなり、はやいところでは2020年2月にリモートワークの実施を決断し、3月、4月にはさらに多くの企業が在宅勤務体制に移行しました。この動きと並行して、リモートワークの課題、問題に対する相談も、我々産業医のもとに次々に持ち込まれました。

それも当然です。出勤すること自体を美徳とし、評価対象にしてきた日本の労働現場において、全面在宅勤務などまさに想定外の事態でしょう。あらゆる仕組みが、従業員が社内に集結し、業務にあたることを前提としてつくられているのですから、在宅勤務を実現するためには、仕組み自体を一から構築し直す必要がありました。

各家庭における脆弱な通信環境をはじめ、スペックの低いPCにセキュリティの壁や情報へのアクセス困難など、課題は山積みです。おまけに一夜にしてコミュニケーションの作法までが変わり、誰もが悪戦苦闘を強いられ、もがいていました。

しかし、ある時期を境に、「若手社員が見違えるように働いている」という嬉しい報せが届くようにもなりました。

この変化の背景には、リモートワークがもたらした「職場の三密」からの解放と、その帰結としての「安心感」の醸成があると考えられます。

精神医学的に解説すると、人間が創造性を発揮するにあたって何より必要なのが「心理的安全性」、つまり安心感です。

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