井岡一翔の“タトゥー論争”「ルールよりも気遣い」が鍵に|島契嗣
大晦日、WBO世界スーパー・フライ級王座の2度目の防衛を成功させた井岡一翔選手のタトゥーが、試合中にはっきり見えていたことで議論を呼んだ。読売新聞大阪本社を経て、NHKに入局し、報道局社会部で警視庁、警察庁担当などを歴任した島契嗣さんが、タトゥー(入れ墨)問題を考える。(文・島契嗣/マカイラ株式会社 コンサルタント)
【選んだニュース】「井岡一翔の“タトゥー論争” 入れ墨を入れた元世界王者・佐藤洋太は『ルールよりも気遣いだと思います』」(1月10日、Number Web/筆者=渋谷淳)
島契嗣さん
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大みそか、ボクシングの世界戦・WBOスーパーフライ級タイトルマッチ。王者の井岡一翔選手(31)が強烈な左で立て続けにダウンを奪い、2度目の防衛を果たした。一昨年、日本男子初の世界四階級制覇を達成した王者の貫禄を見せつけて、ボクシング界の2020年は幕を下ろした。
ところが、この好試合は、年が明けて思わぬ“場外戦”をもたらした。王者井岡の左腕のタトゥー(入れ墨)が露出した状態だったことが物議を醸したのだ。タトゥーは左肩からグローブまで、びっしり入っており、かなり目立つ。実は試合開始前から井岡選手のタトゥーが話題を呼び、SNS上では「タトゥーはファッション」「ルール違反じゃないか」などと賛否両論が渦巻いていた。
日本ボクシングコミッション(JBC)のルールでは「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」は試合に出場できないと定められている。つまり、タトゥーを施すこと自体が禁止されているわけではなく、試合中は観客に見えないようにすれば問題ない。実際、井岡選手側は試合前、ファンデーションを塗ってタトゥーを隠そうとしたが、汗で薄れてしまったという。JBCはルールに反したと認定し、1月21日に井岡選手に厳重注意処分を科して騒動は一応の決着をみた。
Number Web「井岡一翔の“タトゥー論争” 入れ墨を入れた元世界王者・佐藤洋太は『ルールよりも気遣いだと思います』」では、同じくタトゥーを入れてリングに上がった元世界チャンピオンの佐藤洋太さんに詳しく話を聞いていた。
「井岡くんとしては『海外では当たり前じゃないか』という感覚があると思うんです。オレもそう思いますけど、ここ日本ですからね。(中略)ルールよりも気遣いだと思います。今回も井岡くんがもうちょっと気遣いをすれば良かった」
「入れ墨を見せて戦いたい(試合をしたい)というのであれば、ルールを改正することに力を注ぐしかない」
佐藤さんに「『タトゥーを入れて何が悪いんだ』とか『世の人たちはもっと入れ墨に理解を示すべきだ』という気負いはない」と記事は続く。海に行っても服は脱がない、夏でも長袖シャツを着るなど、佐藤さんの考えや行動の根底には「知らない人が入れ墨を見たら怖いと感じると思う」という自覚がある。それが「気遣い」という言葉に表れている。
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