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武田徹の新書時評|膠着語の新語・造語文化

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します

膠着語の新語・造語文化

外国人力士が増えている相撲界で、難なく日本語を操るモンゴル勢の姿を見て不思議に感じたことはないだろうか。

英語のようにI、My、Meと格変化したり、単複でI、Weと単語自体が姿を変える(屈折させる)インド・ヨーロッパ語族の言語を「屈折語」と呼ぶ。それに対して「私」という単語はそのままに「は」「の」「に」「たち」と語尾をくっつける日本語のような言語は「膠着語」と呼ばれ、フィンランド、ハンガリーから中央アジアを経て極東に広がり、ウラル・アルタイ語族を形成する。

田中克彦『ことばは国家を超える』(ちくま新書)によればウラル・アルタイ語族に属する言語は文の組み立てが相互に似ており、単語を入れ替えれば言葉の壁を超えて文意がほぼ通じるという。モンゴル人力士の日本語上達の早さはそれが理由らしい。そんな膠着語を屈折語よりも劣った言語だとみなす言語学上の通説と「思想的なたたかい」をしてきた著者の自伝的な要素も備える本書は、読者の言語観を変える刺激に富む内容だ。

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