
世界経済の革命児 エリック・ユアン|大西康之
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ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、エリック・ユアン(Eric S. Yuan、Zoom創業者CEO)です。
エリック・ユアン
新型コロナで名を売った“巣ごもり発明家”
ビデオ会議サービス「Zoom」を運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ。「Zoom会議」「Zoom講義」に始まって、果ては「Zoom飲み会」まで。新型コロナで自宅にこもる人々の必須アイテムとして、あっという間に世界に広がった。
Zoomが登場する前にも、インターネットを使ったビデオ会議システムは存在した。しかしマイクロソフトの傘下に入った「スカイプ」やグーグルの「ハングアウト」などそれまでのシステムに比べ、Zoomは圧倒的につながりやすく、回線が切断されにくい。3月時点で2億人だったZoomの利用者は4月21日までに3憶人に増えた。新型コロナウイルスの感染拡大で最も名を売った企業の一つだろう。
Zoomがナスダック証券取引所に株式を上場したのは2019年4月。オープニングベルを鳴らすため、創業者でCEO(最高経営責任者)のエリック・ユアンが姿を現すと、会場がどよめいた。生でこの男を見る機会は滅多にないからだ。
人見知りなわけではない。ウェブビデオ会議ソフトを世界に普及させることを自らの使命と考えるユアンは、相手が超のつく大物でもリアルで会う前に必ずこう言う。
「まずは、リモートでお話ししませんか」
Zoomを使った打ち合わせが終わると、大抵の人はこう言う。
「次からもZoomで構いません」
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