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「一律給付10万円」の使途と日本の寄付文化|三浦瑠麗

★前回の記事はこちら。
※本連載は第27回です。最初から読む方はこちら。

 前回は、弱者保護に資源を集中させにくい日本の世論の構造について取り上げました。困窮の度合いに応じて支援をするという考え方は、必ずしも人々の理解を得られなかった。当然、3分の1以上の世帯に収入減が見られることも背景にはありますが、幅広い理解を得ながら生活困窮者を支えることの困難が浮き彫りになりました。

 本日は、山猫総合研究所および創発プラットフォームが実施した新型コロナウイルスに関する緊急調査の結果見えてきた、日本の寄付文化のありようについて書きたいと思います。

 現金一律10万円給付には申請が必要です。既に申請を終えた方も多いでしょうが、マイナンバーカードを用いて認証する形式の電子申請手続きでも、郵送での申請手続きでも可能です。本調査では、申請して10万円を受け取ると答えた人が9割を超え、申請しないと答えた人は1.9%にとどまりました。10万円の使途については、半数弱の人が生活費にすべて充当するとしており、人びとの暮らしがすでに苦しくなっていることを裏付けています。残りの半数強の人びとのうち、2割は生活費に一切使う必要がない余裕のある人々であり、3割は生活費にいくばくかを充てるとしています。

 では、収入が減っておらず生活に余裕のある人は、弱者支援にその10万円を活用する意向がどれだけあるのでしょうか。寄付について尋ねたところ、2割強の人が寄付意向を持っており、3%の人は10万円すべてかそれ以上を寄付してよい(あるいはすでにした)と答えました。

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 しかし、問題は寄付先の選定方法です。寄付文化の発展していない日本では常に名の知られた支援機関、例えばユニセフや日本赤十字などに寄付が集まってしまう傾向があります。親のいない子どもの支援というとランドセルの寄付、といったようにイメージが固定しているものもあります。航空会社のマイレージや、ポイントカードのポイントを利用して寄付をする仕組みもありますが、こういったものに寄付をしたいと思う人びとにとって使いやすい、自分で寄付先を探していくタイプの選定支援は重要でしょう。最近では、寄付型クラウドファンディングサイトのように、寄付先へつなぐためにそれらを束ねるような仕組みもできています。

 案の定、調査でも寄付先の選定に悩む人が多数派であり、既存の有名な団体やテレビでの情報がいまだ大きな影響力を持っていることが窺えました。一方で、インターネット、SNS、個人的な知り合いのネットワークで支える先を選定したいという意見も窺えることから、新型コロナウイルス禍により支え合いの機運が生じ始めているのかもしれないという期待が持てます。

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 寄付をする時には、受け皿となる多くの支援機関において中間マージンが生じます。寄付を届けることを目的としている人々のマネジメント料にも支援のお金が使われるからです。支援をつなぐ仕事はとても貴重なものなので、中間マージンを取り除くことがいいことだとは決して思われません。一方で、日本でも支援機関がしっかりと情報開示をすることによって、そこにおける効率やアウトプットの実効性も厳しく問われるようになるでしょう。よく、被災地に届けられる支援物資がニーズと実はマッチしにくいということが指摘されます。善意で送ったものが、必ずしも困窮者が必要としているものであるとは限らないからです。

 その点、お金での支援は何にでも使えるから分かりやすい。ただその分、支援をした側に「実感」がなければなりません。寄付型クラウドファンディングが人気なのは、簡便さに加えて、支援の見返りとして感謝状やチケットのような分かりやすい実体が得られることもあるのでしょう。いままで様々な寄付をしてきましたが、やはり自分でも大切にしているテーマ、身近なところ、想像しやすいところに支援をしている気がします。

 例えば、日頃から「毎月いくら寄付をする」と決めている人もいます。飲食店のレジなどにおいてある被災地支援募金箱におつりを入れるように、それがどこにどのように使われたかは詳細に追わないけれども、自分の収入のいくばくかを社会貢献に回すという態度です。これは倫理観の強い人ならば継続的にできることかもしれませんが、やはり自分のお金が何に使われたのか、どのように効率的に役立ったのかを透明性をもって知りたいと思うことは正義ですし、情報化社会の自然な流れでしょう。

「エシカルな消費」が流行しているように、寄付行為自体に満足感や充実感をもたらすことも重要です。新型コロナウイルスに伴う自粛による経済への打撃で、常連客が一生懸命飲食店を支援するために通うという現象が起きました。この場合、自分が愛着を持つ店が生き残るべく応援すること自体に満足感が伴います。飲食店をめぐる状況は依然として厳しいものです。イベント需要頼みではなく、真に「お客を持っている」店がコロナ後に生き残ることでしょう。一過性の興味関心では支えきれないと考えるべきです。

 現在の寄付先の想定はどのようなものでしょうか。回答者に上から優先順位の高いものを二つまで選定してもらったところ、医療系(病院、医療従事者、医療物資など)に寄付したいと考える人が2割弱に上り、続いて新型肺炎に感染するリスクにさらされている高齢者のホーム、障碍者施設などの社会福祉施設、次いで飲食店が選ばれました。文化芸術系、小売系などの自粛のあおりを受けている業者や業界についての認知度は必ずしも高いとはいえません。

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 寄付のしくみで、一番日本に浸透したのはふるさと納税でしょう。果たして寄付と言えるのか、疑問であるケースが多いように思いますが、税額控除が寄付を促進することは実証済みです。今回、新型コロナウイルスにまつわる寄付が税額控除の対象となった場合について尋ねたところ、新たに3割の人が寄付を検討すると答え、1割弱の人が現在検討している寄付額に上乗せして寄付してもよいと答えました。

 今後、経済的影響が長引くことが予想されます。引き続き約半数の人びとが苦しむ一方で、政府の経済支援策はToo little too lateです。生活に余裕のある層、潤沢な資産を持つ人びとなどがどのように民間発の取り組みで社会を支えられるのか。今回のコロナ危機はこれまで順風満帆だった業界や企業、団体も直撃しています。助けてくれ、と声をあげることは恥ではありません。業界を横断した取り組みや、街をあげての取り組みが待たれます。

★次週に続く。

■三浦瑠麗(みうら・るり)
1980年神奈川県生まれ。国際政治学者。東京大学農学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修了。東京大学政策ビジョン研究センター講師を経て、現在は山猫総合研究所代表。著書に『日本に絶望している人のための政治入門』『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『21世紀の戦争と平和』(新潮社)などがある。
※本連載は、毎週月曜日に配信します。
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コメント (1)
「助けてくれ、と声をあげることは恥ではありません。」同感です。もう一歩進めて、国民が声を上げる前に、国民の窮状を忖度して、仮に国の借金が増大するにしても、更なる現金をEnough and timelyに支給して欲しいと思います。
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