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”東大女子”のそれから|#3 あられさん(仮名、会社員)

日本の大学の最高峰「東京大学」に初めて女子が入学したのは1946年のこと。それから74年――。本連載では、時代と共に歩んできた「東大卒の女性たち」の生き様に迫ります。第3回は、建築系の会社員のあられさん(仮名、2008年工学部建築学科卒業)にお話を伺います。婚活ブログで人気ブロガーになったあられさんですが、恋愛が苦手で、2年半の婚活を「人生で一番苦戦した」と振り返ります。/聞き手・秋山千佳(ジャーナリスト)

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――あられさんの人気ブログ「トウダイリケジョの婚活記」を拝見して、直接お話を聞いてみたいと思っていました。2016年1月に「これは、30歳を迎えた東大理系女子による苦難と悲哀に満ちた婚活とその分析の記録である」という書き出しで始まり、五十数人の高学歴男性に会っていくわけですが、そもそもなぜブログにしようと?

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婚活アプリを使い始めた頃に家でその話をよくしていて、親から「会ってみたらこんな人だったという描写が面白いからブログでもやったら?」と勧められたのがきっかけです。だから親きょうだいは皆読んでいます。親しい友人も数人知っていて、偶然見つけたという男友達もいました。突然LINEがきて「みちゃった」みたいな(笑)。最初はプロフィールをもっと詳細に書いていたんです。読者から心配されて少し修正しましたけど、基本的には事実に基づくことしか書いていません。

――大学や建築系のお仕事のことも書いていますよね。もともと建築を志していた?

具体的な目標はありませんでした。東大は入学してから専攻を選べるので、入ってから考えようと思ってました。学校行事を高3夏まで頑張ったので浪人するつもりで、東大の受験票があると予備校が1年間無料になるらしいと聞き、どうせ落ちるなら東大理Ⅰを受験するかと。高校(国立)の同級生が皆受けるからという感じでもありました。

――そうしたら現役で合格したんですね。一方、恋愛についてはブログで「資質がない」と自己分析し、結婚を志すことを「九九も言えないのに積分を解こうというのと同義だ」と書いていましたね。いわゆる“恋愛偏差値”は九九もできないレベルだと思うのですか。

はい。婚活以前からものすごく苦手意識があって、そういう話題も苦手です。女性が集まるとだいたいそういう話になるじゃないですか。関心もないし話すこともないから、面倒くさい話題だとずっと思っていました。

――学生時代はどうでしたか。

大学時代に初めての彼氏ができました。大学のサークルの先輩で、相手からのアプローチでした。サークルでいじられるのが面倒で、お付き合いは数カ月しかもちませんでした。

ちなみにその方とは、学生の間も彼が就職してからも継続的に会ってはいました。彼の勤め先が地方だったので、わたしが東京で就職を決めたことで、自然とそれもなくなりましたが。

――恋愛にはまらない?

はまらないですね。2人でいなきゃいけない時間より、みんなでワイワイするか、そうでなければ1人で自由に時間を過ごす方が好きなので。

――「いなきゃいけない」というあたりに本音が出ているというか。サークルは何だったのでしょう。

テニスサークルです。当時、東大にはテニスサークルが100以上あって、東大女子が入会を許されるのは三つだけ。クラスは自分含め女子3人だったので、そのうちの一つに、華やかな文系女子の友達を作りたくて入りました。

――学生時代の恋愛はそのサークルの先輩だけですか。

はい。あと社会人になってからもう1人。ブログを始める少し前にアプリで知り合って、試しに付き合ってみるかと思ったんですけど、それも数ヵ月だけ。自分の時間を消費されているようで、会う時間を作るのが本当に面倒くさくなっちゃうんですよ。

――ブログではその彼氏はいなかったことに。それくらいどうでもいい存在?

そうですね、ごめんなさいという感じですけど。この人は東工大の人でした。

――ブログには会った男性の学歴を明記していて、未婚のフリをして婚活アプリを使う既婚者よりも、東大以外の大学出身で東大大学院に進学した男性を「学歴ロンダリング」としてより罪が重いとしていましたね。

学歴ロンダリングには良い印象を持ってないですね。

――そのように学歴にこだわりがあるあられさんにも東工大なら良い印象でしたか。

私、浪人して受験しようと思っていたのは東工大なので、憧れや畏怖の念が強いんです。受験のことしかわからないですけど、東大はマルチに複数教科ができることを求められて、東工大は数学と物理のスペシャリストという理系の絶対王者的なイメージがあります。

――その魅力を持つ相手でも、恋愛は面倒くさくなったのですね。

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