見出し画像

開業医の新しい役割 尾道市で膵がんが治るのはなぜか

文・長田昭二(ジャーナリスト)

 日本人は大学病院が大好きだ。

 背景には、大きな組織への憧れ、「教授」という肩書への尊敬の念、色々な診療科があることで得られる安心感などがあるのだろう。

 大学病院に憧れたり、大学教授を尊敬することは悪いことではないが、「大学病院=上」「中規模病院=中」「診療所=下」のように考えるのは間違いだ。

 そもそもこの3つの医療施設は、担うべき役割が異なる。

 大学病院には、診療所や中規模病院などでは手に負えない専門性の高い医療、高度な技術や設備を必要とする難度の高い医療を提供する――という使命がある。そんなところに軽症患者が集まると、その対応に手を取られて、本当にその病院でなければ診られない患者への医療が疎かになりかねない。

 日本の医療制度は、“交通網”と似ている。大学病院は新幹線、中規模病院は在来線、診療所は地下鉄やバスに置き換えて考えると分かりやすい。新幹線に乗る時には、新幹線の駅までは地下鉄や在来線を乗り継いでいくものだ。医療も同様で、最初は開業医にかかり、必要に応じて中規模病院、大学病院へと紹介されていくのが本来の姿だ。かぜのような軽症でいきなり大学病院に行くのは、東京駅から品川駅まで新幹線に乗っていくような、非効率的な行為なのだ。

 これを防ぐ目的で、紹介状を持たない患者がいきなり大学病院のような大規模病院や特定機能病院に行くと、選定療養費というペナルティ加算が付くのだが、それを払ってでも大学病院に行こうとする患者が一定数いて、それを病院は断れない。日本の医療制度が認める「フリーアクセス」という特殊なルールによるものだ。

 しかし、ペナルティを支払ってでも大学病院に行ったほうが安心――と考えるのは誤りだ。はっきり言おう。開業医を低く見る者は長生きできない。

この続きをみるには

この続き: 1,762文字 / 画像1枚
この記事が含まれているマガジンを購入する
文藝春秋digitalが送る「2020年の論点100」は、幅広い教養が手軽に身につくマガジンです。今最も人気がある100人の論者が100個の論点を明快に解き明かします。激動の2020年を生きるあなたの強い味方になる1冊です。

日本を代表する知識人たちが2020年に日本が直面する100の課題を徹底的に論じた教養マガジン。小論文対策をしたい高校生から、レポートに困っ…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
1
シェアしたくなる教養メディア。100年近くの歴史がある総合月刊誌「文藝春秋」が、あなたの人生を豊かに彩るコンテンツを毎日お届けします。

こちらでもピックアップされています

2020年の論点100
2020年の論点100
  • 101本
  • ¥1,400

日本を代表する知識人たちが2020年に日本が直面する100の課題を徹底的に論じた教養マガジン。小論文対策をしたい高校生から、レポートに困っている大学生、教養を身につけたいビジネスマンまで幅広くサポート。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。