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読者からのお便り 2022年12月号 三人の卓子

創刊100周年の雑誌『文藝春秋』での名物コーナー「三人の卓子」。読者の皆様からの記事への感想を募集・掲載しています。
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仮面を剥ぐ家系図

私は司法書士という職業柄、他人様の死亡後の相続説明図というのを半世紀にわたって描いてきた。相続説明図を描くためには、まず戸籍や除籍、原戸籍をもとに図式化する必要がある。すると、その人がどのように生きてきたかが分かるのである。

11月号の特集「習近平の仮面を剥ぐ」。北海道大学大学院・城山英巳教授の『愛憎渦巻くファミリーの歴史』の冒頭には、習近平の家系図があった。

簡潔な図面ではあるが、これを描くには相当多数の文献を用いなければならないことは十分に想像がつく。

習近平のきょうだいには、遠平、和平、乾平、富平などがいる。しかし和平、乾平、富平は異母兄弟である。父親が再婚しているなどといった、謎に包まれた近平の仮面の裏が、家系図ひとつで見えてくるのだ。

城山教授の文章も分かりやすく、一気に読んでしまった。近平の父・仲勲は「香港の法律制度を学ばなければならない」と主張するなど、開明的だったという。

しかし近平は、父親を「反面教師」として生きた。その結果暗い中国になってしまったことは、悲しい気がする。(福岡県 狩川清則)


疑惑の人の大芝居

11月号、西﨑伸彦さんの『森喜朗が脅された夜』は東京五輪の知られざる醜態が赤裸々に綴られており、ドキュメンタリー番組を観ている錯覚に陥りました。

東京五輪の支出総額は1兆4238億円。空前の巨費を投じた大会です。大会組織委員会はそれまでの「一業種一社」の原則を撤廃し、東京方式でスポンサー68社から3761億円を集めました。そこに群がったのが、政治家や金儲けを画策する企業などでした。

大会組織委員会の理事だった高橋治之氏は仲介事業に取り組みますが、その手法は長年勤めた広告会社大手「電通」で培ったものでしょうか。高橋氏は、委員会の中で優位な立場をつくることに腐心していたようです。

コロナ禍で五輪の開催が危ぶまれる中、高橋氏は米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の取材に「1年か2年の延期が現実的」と答え独断専行しました。

これがIOCバッハ会長の逆鱗に触れ、森喜朗氏は高橋氏に理事辞任を求めたのです。引導を渡そうとした森氏に対して、高橋氏は「やれるもんならやってみなさい」と啖呵を切ったといいますが、優位に立ちたい高橋氏の大芝居であることは一目瞭然です。

10月16日、新聞紙面では高橋氏の4度目の逮捕に向けた動きが報じられました。

「東京五輪が残した“レガシー”は、未来へと繋がる希望ではなく、金に塗れた絶望の記憶だった」

最後の筆者の言葉は、多くの国民の声の代弁だと思います。(愛知県 松坂年造)


松田聖子の歌声

11月号、若松宗雄さんの『松田聖子と神田沙也加』が目に留まった。松田聖子さんと神田沙也加さん、両者の対照的な姿を興味深く読んだが、まず聖子さんのデビュー秘話を初めて知って驚いた。

レコード会社でプロデューサーをしていた若松さんがデビュー前の聖子さんの歌声に衝撃を受け、久留米の実家に説得に駆けつけていたという。聖子さんも父の反対を知りながら歌手デビューへの思いを手紙に書いて、何度も若松さんに送っていたとは……。

結果的に歌手デビューは正解で、今日までの活躍ぶりに関する詳しい説明は今さら不要だろう。

一方で愛娘の沙也加さんの表現力と歌唱力も忘れがたい。母親と違ってミュージカルでの活躍が目立つが、私は「アナと雪の女王」の劇中で披露した綺麗な歌声が印象に残っている。

沙也加さんの突然の訃報は至極残念だった。急きょ札幌に向かい、愛娘と無言の対面をした聖子さん、父の神田正輝さんの慟哭を想像しただけで胸が痛む。コロナ禍ゆえ、質素な形で荼毘に付さなくてはいけなかったことも寂しすぎる。

聖子さんには、昔と変わらぬ歌声を聴かせてほしい。芸能界で開花させた才能を自らの手で閉ざさないでほしい。

天国に旅立った愛娘のためにも、ファンのためにも、そして自身のためにも、一日も早い立ち直りに期待を寄せたいものだ。(富山県 稲塚就一)


自己啓発力

11月号、鷲田康氏の『村上宗隆 三冠への原点を見た』を読むと、東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆は非凡な才能が開花したというよりも、凡事徹底の人だということが分かる。

プロに進む人は、なにがしかの才能を持ち合わせている。それでも、厳しい競争に生き残るのは一握りの選手のみに限られている。

2017年のドラフトの時点では、同級生である清宮幸太郎の方がむしろ実力も評価も上だったはずであり、注目度も高かった。しかし、プロに入って差がついた。プロは結果が全て。村上と清宮との間にどういう差がついたのか。

ヤクルトのGMを務める小川淳司氏は、村上の「自己啓発力」がすごいと言う。これはプロに入ってから身につけたものではなく、元々持っていたものなのだろうか。

自ら問題点を見つけるというのは、教えてできるものではない。ましてその問題点の克服に向けて毎日繰り返し練習することは、言葉で言うのは簡単だが、誰もができることではないだろう。

村上には、今やチームを引っ張る責任感も芽生えている。それだけの実績と、四番打者としての圧倒的存在感があるのだ。

はたして大谷に続いてメジャーに行くことになるのだろうか。メジャーに行くか否かは今後も注目されるだろうが、一プロ野球ファンとしては寂しい限りだ。こういうバッターこそ、日本に残って活躍してほしい。(東京都 黒野文博)


47年前のブライダル

11月号の特集「結婚今昔物語」。桂由美さんの『生涯ブライダルひと筋の挑戦』を読みました。

私が結婚式を挙げた当時は、「お嫁さん」といえば角隠しに打掛、振袖。洋装なんて考えもつかない時代で、ウエディングドレスは外国の人しか着られないと思っていました。

ところが女性雑誌にウエディングドレスの写真が載っているのを見て、「ドレスも着てみたい」と思うようになりました。

親は「着物に決まっている」「和装の花嫁姿で家を出るのが当たり前」と反対しましたが、どうしても着てみたいという一心で、お色直しでドレスを着ました。今から47年前のことです。

桂由美さんは「自分で店を開くしかない」と心に決め、洋裁学校の経営と並行して、日本に新しい結婚式のかたちを導入しました。花嫁を美しく、との想いで、伝統や風習を守りながらも結婚式に対する考え方を変えることに邁進されたのです。

桂さんご自身も、仕事だけでなく結婚もされて、幸福な家庭を築かれました。お互いのことを認め合って、本当に大人の結婚だと思います。

今の時代、結婚しない人も多くなっています。「1人の生活で不自由はないし楽だから」など考え方は色々ありますが、やはり家庭を持って生涯のパートナーと過ごすのはいいものです。

その出発点である結婚式を幸福で美しいものにしたいという熱い想いで、今も「ブライダル」に携わっている桂さん。ブライダルという言葉の響きに幸福を感じます。

記事を読み、47年前の結婚式の写真を見てみました。ドレス姿、良かったです!(三重県 井上とみ)


夫婦で大ファン

長年夫婦で愛読している「文藝春秋」。楽しみにしている記事のひとつが、グラビア連載の「小さな大物」。冒頭の幼少期の写真とヒントから誰が取り上げられるかを当てるクイズを、勘のいい夫はすぐに解いてしまう。

しかし今回ばかりは、私もヒントを読んでピンときた。

「はなさん!」

2人揃って声を出した。11月号に登場したのはモデルのはなさんだ。待ちに待ってやっと登場してくださった。

ずいぶん前のことになるが、徳光和夫氏が司会のテレビ番組「世界ウルルン滞在記」にはなさんが旅人として出ていた。外国でのホームステイ体験や、世界各国での現地取材を拝見し、夫婦そろって大ファンになった。

モデルを本業とされているだけあって、スラリとのびた手足。ナチュラルな感性の持ち主で、向学心旺盛。どこか育ちの良さを感じさせる知性豊かな女性、というのが夫婦共通で抱いている印象だ。インタビューで、「姉弟喧嘩は英語でします」とおっしゃっていたのも心に残っている。

「小さな大物」のプロフィール紹介で、はなさんの魅力をより一層知ることができた。恵まれた才能とたゆまぬ努力による今後のご活躍を願ってやみません。(大阪府 長谷和子)


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