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想いを伝える遺言と、思いやりとしての遺言【イベント開催レポート】

去る8月28日、文藝春秋では、三菱UFJ信託銀行協賛の下、「人生100年時代を幸せに過ごすための相続セミナー」をオンラインで開催した。

長寿時代に突入した現在の日本では、多くの人たちが加齢に伴うさまざまな不安を抱えながら生きている。自分や家族の健康、そして認知リスクなど、幸せな人生100年を過ごすためには、元気な時期からの備えが必要になってくる。家族への想いの伝達、そしてスムーズな資産継承を行うには、「遺言」という方法がある。

このイベントの出演者は、アナウンサーの渡辺真理さんと三菱UFJ信託銀行フェローの小谷亨一さん。「想いを伝える遺言と、思いやりとしての遺言」と題し、スペシャル対談を行った。小谷フェローは、三菱UFJ信託銀行において、これまで、相続業務を担うリテール受託業務部部長として遺言の企画・審査・執行などに従事、現在は、相続・不動産のエキスパートとしてセミナー講師などを務めている。1万件以上におよぶ相続に接してきたプロ中のプロであるだけに、その言葉は並々ならぬリアリティに満ちあふれていた。以下、小谷フェローの発言を抄録したい。

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(左から)渡辺さん、小谷さん

想いのこもったメッセージを残す

飛躍的に寿命が延びた現在は、一昔前に比べ、親子ともども資産継承の年齢的なタイミングが10~20年ほど後にずれました。ゆえに、使う・残す・守るという側面において、その間の金融資産のあり方も変わってきます。また、あえて子どもではなく孫に財産を渡すなど、資産の分配の仕方に工夫を要するケースも見られます。事業継承に関しても、生前に進む事例がかなり増えています。最近では、終活がブームとなっているだけあり、「エンディングノート」の準備も一般的になってきました。しかし、あくまでもエンディングノートは性格がカジュアル。法的効力を持つ遺言とは意味が異なります。

具体的に、遺言に記載することで法的効力を持つ事項とは、①財産の処分に関すること、②相続に関すること、③身分に関することの3つです。しっかりと遺言を残すことで、自らの死後のトラブルを避けることができます。

遺言においては、法律に基づいた生硬な本文では気持ちを伝えるのが難しい。でも、「付言」を加えることで、相続人に対し、想いのこもったメッセージを残すことが可能になります。俗に「争族」とも呼び習わされるように、相続に際しては、実際に関わる前には想像もしなかったような不安やストレスに襲われるものです。家族間の不和などが生じることもある。

それらを回避するため、つまり、相続人への思いやりのためにも、遺言は非常に大切なものなのです。

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遺言があれば、相続時の精神的負担はかなり軽くできるし、遺言執行者として専門家を指定すれば、相続手続における事務的負担も減らすことが可能です。遺言執行の専門家とは、司法書士、税理士、弁護士、それから信託銀行などを指します。遺言の執行は、財産の分配を決めた時点で終了するのではありません。それを実現することで完遂されます。その煩雑この上ない作業すべてを、専門知識を持たない一般の相続人が行うのはあまりにも大変です。第三者を執行人に立てることで、その負荷を取り除くことができる。そういう意味でも、遺言はかけがえのない思いやりとなるのです。

遺言というと、亡くなる直前に書くものというイメージがあるが、亡くなる前では間に合いません。60代後半ぐらいから用意を始めるのがおすすめです。遺言の執筆は、それ以降も書き換えることを前提として進めるのが賢明。年齢や周囲の状況の変化に応じて、何度でも見直したい。自分の誕生日やお正月など、節目節目に書き直すのもよいかもしれません。遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がありますが、どちらかと言えば、公証人の確認を経て作成される「公正証書遺言」の方が安心です。

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「今後は、生活様式の変化に合わせて遺言をうまく使いこなすことが大切です」小谷フェローはそう言ってセミナーを締めくくった。聴衆それぞれにとって、自らのこれからを考え直すための大変有意義な時間となったことだろう。

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