見出し画像

清武英利 朝駆けをやめたあとで 記者は天国に行けない16

ぞっとするような夏だった──。“証券業界の闇”をひとり暴き続ける/清武英利(ノンフィクション作家)

1

 駆け出しのころは、来る日も来る日も書いていた。取材した記事が翌朝の新聞に掲載されるのが嬉しくて、夢中で書いた。新聞による権力監視と社会正義の追求を心から信じ、1日に十数人に会った。次から次へと大勢に話を聞いて、頭の芯がぼんやりとしてしまう“人酔い”というものがあることを知った。

 やがて、自分の記事が人を傷つける場合があることに気づき、周囲を見渡せるようになった。「これは書くな」「あの取材はやめておけ」と告げられるようになった。記事をめぐる上司との口論が増えた。

ここから先は

10,996字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください