【座間9人殺害事件】白石隆浩の「10人目になりたかった」女性たち
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【座間9人殺害事件】白石隆浩の「10人目になりたかった」女性たち

死刑判決を聞いても彼女たちは「自分も殺されていればよかった」と語る。/文・渋井哲也(ジャーナリスト)

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▶︎かつて白石と連絡を取り合った女性、美南さん(仮名)は「殺されていれば良かった」と語る
▶︎座間事件における白石と被害者のやりとりは、かつての「ネット心中」のやり取りと酷似する
▶︎「10人目になりたかった」と被害者に共鳴する人が複数いた。彼女たちが置かれた状況の深刻さを感じさせた

ツイッターでやりとり

2020年8月上旬、埼玉県のある公園でアルバイトの美南(仮名 20)は睡眠薬を飲み、木にロープを結んで首吊り自殺をしようとした。しかし、ロープは外れ、意識が混濁する中で倒れた。

美南は、学校でいじめを受けていた。小学校では女子からトイレで水をかけられ、男子からは殴られた。中学では不登校になり、高校は精神的に不安定になって中退した。

進路に悩んだが、家族には相談できなかった。幼いころから両親は喧嘩ばかり。父親は酒を飲むと、美南の首を絞めることもあった。

自殺を考えるようになったのは17年1月、17歳のときに性被害にあってからだ。フェイスブックで知り合った、“自称医者の30代の男”と秋葉原で会うことになった。

「将来、公務員を目指していたんです。どうすれば、なれるのかと思っていたところ、話を聞いてくれるということでした」

カフェで話をしていると、男は「詳しい資料が家にあるので、来ませんか?」と美南を誘った。悪い印象はなかったので付いていった。

「家に着くと、男の態度が急変し、襲われたのです。抵抗しましたが、止めてくれませんでした」

警察に被害届を出したが、事件として捜査された様子はない。

「死にたい」。美南は、性被害から7ヶ月後の8月末、ツイッターのアカウントにその気持ちを投稿した。そして、2週間後の9月12日から、「死にたい」というツイッターのアカウントとダイレクトメール(DM)でやりとりが始まった。

アカウントは白石隆浩被告(以下、白石)が開設したものだった。

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送検時の白石隆浩被告

「自殺をお考えですか?」

東京地裁立川支部の裁判員裁判(矢野直邦裁判長)は20年12月15日、「犯罪史上稀にみる悪質な犯行」などとして白石に求刑どおり死刑を言い渡した。

白石は、17年10月に神奈川県座間市内のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で逮捕、起訴された。「#自殺募集」などのツイートをしている女性を狙って、その女性のヒモになるか、そうでなければ、女性を失神させ、強制性交して金を奪うことを考え、8人の女性を殺害し、遺体を遺棄。男性1人については、証拠隠滅のために殺害した。

9人は、自殺を手伝ってもらうか、一緒に死のうとして白石宅を訪れた。しかし、被害者は自殺の意思を撤回したり、想定していた殺害方法ではなかったなどとして、弁護側が主張した承諾殺人は認められなかった。

2ヶ月という短期間で9人もの若者たちがSNSなどのやりとりだけで、見ず知らずの男のアパートに行き、殺されてしまった。被害者たちはなぜ座間に向かったのか――。

美南がやりとりしたアカウント「死にたい」について、白石は「一緒に死にましょうという設定」と公判で答えていた。

死にたい ご連絡ありがとうございます。神奈川に住んでおります。

美南
 関東一緒ですね。

死にたい
 自殺をお考えですか?

美南
 はい。

死にたい
 一緒に死にますか?

美南
 何歳ですか?

死にたい
 25歳です。首吊りの道具と薬を用意してあります。

白石は当時27歳。実年齢よりも年下に設定した。被告人質問では「相手の年齢に近づけた」「そのほうが信頼されるから」と理由を述べた。

美南 殺してもらえないですよね首絞めて。

死にたい
 本気で言ってるんですか?

美南
 首吊り2週間くらい前に失敗して。首吊りのやり方が失敗するとしか思えなくて。

その後、白石はメッセージアプリのカカオトークでの連絡を要求した。カカオトークでのアカウントは「―(ハイフン)」だった。

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