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スターは楽し モーガン・フリーマン|芝山幹郎

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モーガン・フリーマン

濁りを恐れぬ受けの芝居

「あの娘は、自分がゴミだという事実だけを思い知らされて生きてきた」

名作『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)の序盤で、ひやりとするナレーションが聞こえる。

声の主は、モーガン・フリーマンが扮するスクラップという元ボクサーだ。スクラップは、うらぶれたボクシング・ジムに住み込んで雑用係をしている。ジムのトレーナーのフランキー(クリント・イーストウッド)は、かつてスクラップのセコンドを務めていた。タオルの投入が遅れたばかりに、スクラップが片眼の視力を失ってしまった過去がある。

よく知られた映画だから、筋書の説明は省く。フランキーは、31歳という年齢で入門を志願してきたマギー(ヒラリー・スワンク)という女子ボクサーを育てはじめる。スクラップは、フランキーの陰でマギーを見守る。マギーの熱意と正直さ、危うさと脆さを、スクラップは早くから見抜いている。

その視線が深い。同情や保護や慈愛といった単色の感情には収まり切らない。スクラップは挫折を知っている。忍耐も待機も逆襲の機会も知っている。ただ彼は、それを表に出さない。とはいえ、クールな口ぶりとか、抑制の利いた声とかいった常套句をはみ出す体温がある。見る者には、それが伝わる。スクラップは紛れもなくマギーを、そしてフランキーのことを案じている。好意やいたわりにとどまらない心の働きが、言動の陰から滲み出る。

モーガン・フリーマンは、1937年、テネシー州メンフィスに生まれた。60年代前半から西海岸でダンスや演技のレッスンを受け、67年、全黒人俳優版『ハロー・ドリー!』の舞台を踏む。

映画に出たのはかなり遅い。『ドライビング Miss デイジー』(1989)で名を知られ、アカデミー賞の主演男優賞候補になったときは、すでに50代だった。

フリーマンが演じたのは、アトランタに暮らすユダヤ系の老婦人デイジー(ジェシカ・タンディ)の運転手ホークだ。1948年の南部が舞台とあって、人種差別は激しい。60代のホークは読み書きができず、ジョージア州を出たこともない。ただ彼には、持って生まれた知恵とユーモアが備わっている。

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