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【全文公開】橋をかける 出口治明さんの「わたしのベスト3」

立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。

出口さんver1

 古典を入れると3冊には絞り切れないので、平成時代に出版された本の中から選んでみた。最初は、『クアトロ・ラガッツィ』。わが国が初めてグローバリゼーションの荒波に対峙した時代、広い未知の世界に船出した4人の少年たち(天正遣欧使節)がいかに健気に振舞ったか。読んでいて胸が熱くなる歴史ロマンだ。小説ではあるが、東西の史料を丁寧に渉猟して裏付けを取っており、そのことが本書に深い重みを与えている。4人の少年の運命は、そのまま日本の運命ではないか。これから、人生にチャレンジしようとする若者には、ぜひとも読んでほしい。豊かな余韻を感じさせる傑作で、高い普遍性を有しており、英訳したら世界でも広く愛読される気がする。

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 次は、『社会心理学講義』。タイトルからは想像できないかも知れないが、本書は最高のビジネス書の1冊だと思う。あらゆるビジネスは、人間と人間がつくる社会を相手としている。そうであれば、人間と社会の本質を丸ごと理解することが何にも増して優先されるのではないか。本書は、人間とは何か、社会とは何かという根源的な問いに真正面から切り込んだ渾身の1冊だ。常識を疑うところから全ての学問はスタートするが、考える力、問いを立てる力を鍛えるには格好の書だ。ノウハウを教える凡百のビジネス書に手を伸ばす前に、本書を熟読玩味して頭を柔らかくしてほしい。

 最後は、上皇后陛下、美智子さまの『橋をかける』。これは、おそらく世界最高の読書論だ。僕は、眠ること、食べること以外には、読書と旅ぐらいしか趣味がないが、読書の楽しさや豊潤さをこれほど簡潔明瞭に述べた素晴らしい書物は寡聞にして知らない。「子供時代の読書の思い出」という副題がついているが、ご自身の読書遍歴の多彩さに先ず驚かされる。読書は、自分と他人との間、自分と社会との間、あるいは自分ともう1人の自分との間に橋をかけるような営為ではないか。心から共感する。まさに珠玉の1冊だ。



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