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霞が関コンフィデンシャル 異例の防衛次官の意味合い、検察信頼回復のカギを握る男、暴行事件で狂った財務省人事、厚労省若返りの余波

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日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。

★官邸vs.安倍の暗闘

年末に防衛費増額、防衛文書の改定と大作業が控える、防衛省の事務次官人事は、霞が関と永田町を震撼させた。

新任の鈴木敦夫事務次官(昭和60年、旧防衛庁)は防衛政策課長の経験はあるものの、局長は整備計画局、地方協力局を務めただけ。前任の島田和久前事務次官と同期で、しかも上がりポストの防衛装備庁長官からの昇格と、何もかもが異例ずくめだ。

背景にあるのは、岸田文雄首相率いる官邸と安倍晋三元首相の確執、防衛政策をめぐる主導権争いに他ならない。

島田前次官は在任2年に及び、続投を要請した岸信夫防衛相ら防衛省に対する官邸サイドの説明は「就任2年での交代は慣例」というものだった。守屋武昌氏(46年)が4年以上続けた例があるが、「長期在任が様々な不祥事の要因となった」と官邸サイドは主張したという。

6年半の間、安倍首相秘書官だった島田前次官の経歴と骨太の方針をめぐる軋轢が交代劇の真相と伝えられる。

官邸の方針に逆らって防衛費増額の書きぶりを「骨太の方針」で強めることができたのは安倍・岸兄弟と高市早苗政調会長の政治家グループと、島田前次官の共同作業だったからでもある。

一方で、防衛費のむやみな増額をきらう財務省、防衛省の力が強くなるのを嫌う外務省。この二大官庁が防衛次官交代に向けてタッグを組んでいた。内閣人事局長を兼ねる栗生俊一官房副長官(56年、警察庁)が秋葉剛男国家安全保障局長(57年、外務省)と昵懇の仲であることも次官交代を後押しした。

また実は、今回の人事には、「ポスト島田」の最有力候補で、菅義偉前首相の懐刀だった増田和夫防衛政策局長(63年、旧防衛庁)外しの意味合いも含まれている。これは岸田官邸の菅氏への警戒感からだ。

島田氏は次官退任後、防衛省の大臣政策参与として残る。防衛政策局と統合幕僚監部が合同で密かに進めている「台湾有事」シミュレーションに島田氏の知識と統率力は不可欠だからだ。年末、両陣営の戦いが再燃するのは必至だ。

★「赤レンガ派」の総長

65歳の定年を迎える林眞琴検事総長(昭和58年任官)が勇退し、後任に甲斐行夫東京高検検事長(59年)が昇格した。検察ナンバー2の東京高検検事長には落合義和最高検次長検事(61年)、その後任には山上秀明高松高検検事長(62年)、さらに、その後任には畝本毅大阪地検検事正(平成元年)が起用された。いずれも想定内の人事と言える。

検事総長に就く甲斐氏は、最高検刑事部長や東京地検検事正も務めたが、法務省刑事局で刑事課長、総務課長、官房審議官(刑事局担当)を歴任した「赤レンガ派」だ。

検事総長候補と目されてはいなかったが、2020年の官邸の検察人事介入と黒川弘務元東京高検検事長(昭和58年)による賭け麻雀事件による玉突き人事の影響で、そのお鉢が回ってきた。

次の焦点は「ポスト甲斐」だ。来年1月に定年を迎える落合氏は検事総長に就かず退官する。後任の東京高検検事長には、検事総長含みで辻裕教仙台高検検事長(61年)の起用が有力視されている。

辻氏はもともと、林氏の「イチの子分」といわれたが、官邸による人事介入に対し、法務事務次官として圧力をかわせなかった。法務・検察部内で評価を下げ、林氏との関係も悪化したとされる。

一連の事件から、検察に対する国民の視線はあいかわらず厳しい。国民が期待するのは政官財の構造的な利権にメスを入れることに他ならない。そのカギを握るのは、将来の検事総長候補とされるエース、森本宏東京地検次席検事(平成4年)だ。

年末に予想される東京高検検事長の交代人事に連動し、森本氏は、法務省刑事局長か東京高検次席検事に昇格するのではと囁かれている。

参院選後、検察捜査に注目が集まるが、「もはや検察内で森本氏の捜査方針に異を唱える人間はいない」(元検察幹部)という。

★「エリート」への不信感

官房長昇格が固まっていた小野平八郎元総括審議官(平成元年、旧大蔵省)の暴行事件で目算狂った財務省人事は、同期の青木孝徳氏が官房長に抜擢される形で決着した。

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